“石つぶて一発で局面を変える”。
けものの巨人は、他の知性巨人と違い「遠距離から戦況を動かす司令塔」の顔を持ちます。
猿のような外見、精密な投擲、そして脊髄液と「叫び」による遠隔巨人化——。
誰が継承し、どこで輝き、どこで限界を迎えたのか。原作の流れに沿いつつ、筆者の視点も交えて読みやすく整理しました。
まずは全体像からいきましょう。
けものの巨人とは?その概要
けものの巨人は、『進撃の巨人』に登場する九つの知性巨人のひとつです。
他の巨人と比べてもひときわ異様な姿をしており、全身を覆う長い毛、猿のように伸びた腕、鋭い眼差しが特徴です。
人間にとってはまさに“怪物”という印象で、最初に姿を現したとき、読者も兵士たちもただならぬ存在感を感じたはずです。
けものの巨人が特に恐れられた理由は、単なる力の大きさや巨体だけではありません。
巨人でありながら、人間のように考え、話し、そして「戦術」を駆使するという点が決定的に異なるのです。
例えばシガンシナ区決戦では、遠く離れた場所から無数の石を投げ、兵士たちを一方的に追い詰めました。
その姿は、ただの怪物ではなく「戦場を支配する司令官」のようでもありました。
ここから、けものの巨人がどんな役割を担い、誰がその力を継承したのかを掘り下げていきましょう。
獣の姿を持つ異質な知性巨人の特徴
けものの巨人は、その名の通り「獣」の姿をしています。
ただし、姿は継承者によって少しずつ変わります。羊のような外見になることもあれば、猿のように毛むくじゃらで、長い腕を振り回す姿にもなります。
共通しているのは、人間的な知性と高度な戦術眼を持っていることです。
通常の巨人はただの怪物で、意思を持たずに人を襲うだけです。しかし、けものの巨人は話すことができ、しかも冷静に戦況を分析し、兵を操るように戦います。
「巨人なのに考えている」――この違和感が、作品世界のキャラクターたちだけでなく、読者にとっても強烈な印象を残しました。
また、けものの巨人には特殊な能力があります。継承者が持つ脊髄液を体内に取り込んだ者を、「叫び」によって一斉に無垢の巨人へ変化させる力です。
これは王家の血を持つ継承者に限られる特性で、まさに戦場の流れを一瞬で変えるチートのような能力でした。
それでは、この巨人を継承してきた人物たちを見ていきましょう。
継承者とその系譜
けものの巨人は、物語の中で二人の継承者が描かれています。
それが、トム・クサヴァーとジーク・イェーガーです。
二人は性格も生き方も大きく違いますが、いずれもけものの巨人を通して物語に大きな影響を与えました。
トム・クサヴァーの獣 ― 静かなる研究者の巨人
トム・クサヴァーは、物語の表舞台に大きく出てくることはありません。
しかし、彼はジークの人生に深く関わり、その思想や行動に決定的な影響を与えた人物です。
クサヴァーが継承したけものの巨人は、羊のような姿をしていました。戦闘能力はさほど高くなく、本人も「自分は戦いに向かない」と語っています。
それでも、彼が巨人を継承していた意味は大きいのです。
彼は研究者として巨人の歴史や「道」と呼ばれる謎の空間を探り、ジークに「世界はどう成り立っているのか」「巨人の力は何なのか」という視点を与えました。
そして何より、ジークにとって“唯一の理解者”となりました。
幼少期から両親の教育に苦しんでいたジークは、クサヴァーの優しい言葉と穏やかな態度に救われます。
「君は君のままでいい」という言葉は、ジークにとって生きる支えとなり、後の思想の根っこにもなりました。
戦場で輝いた巨人ではなくとも、彼がいたからこそジークという後継者が生まれたのです。
ジーク・イェーガーの獣 ― 投擲と指揮の化身
ジーク・イェーガーこそが、けものの巨人を最も有名にした継承者です。
彼の獣は、全身を毛で覆われた巨大な猿の姿をしています。特に長く伸びた腕は特徴的で、それを活かした投擲攻撃は恐ろしく正確です。
シガンシナ区決戦では、その力が最大限に発揮されました。
遠く離れた場所から小石や瓦礫を握りつぶし、まるで野球の投手のように投げつける。その一撃一撃が砲弾並みの威力を持ち、兵団の大部隊をあっという間に壊滅させたのです。
その場面は読者に強烈な恐怖を与えると同時に、「ただの巨人」ではなく「戦場を支配する軍師」としての姿を印象づけました。
また、ジークは王家の血を引いていたため、脊髄液を飲ませた人間を「叫び」によって巨人化させる能力を使えました。
これはまさに兵器以上の脅威で、一国の運命すら変えかねない力です。
ただし、ジーク自身も万能ではありません。リヴァイとの戦いでその弱点が露わになりました。
いくら広範囲を制圧できても、一瞬で間合いを詰める相手には対応できない。シガンシナ区決戦では、リヴァイに完膚なきまでに叩きのめされました。
それでも、ジークの存在感は揺るぎませんでした。
彼は戦場で暴れるだけでなく、自分の思想を持ち、それを実現するために行動し続けたのです。
「エルディア人は子どもを残さなければ世界から憎しみが消える」――安楽死計画という極端な理想は、多くの読者に衝撃を与えました。
ジークのけものの巨人は、ただの戦闘力以上に、物語全体を揺るがす“思想の象徴”だったのです。
まとめ
最後に、二人の継承者の違いを整理しておきましょう。
継承者 | 外見 | 特徴 | 物語への影響 |
---|---|---|---|
トム・クサヴァー | 羊のような巨人 | 戦闘力は低い | ジークに思想と生きる支えを与えた |
ジーク・イェーガー | 猿のような巨人 | 投擲と“叫び”で戦場を支配 | 戦場で恐怖を広げ、物語全体の思想を動かした |
けものの巨人は、ただの「戦闘兵器」ではありません。
継承者の生き方や考え方を強く映し出す“鏡”のような存在でした。
だからこそ、この巨人の姿は読者の記憶に強く焼き付き、進撃の巨人という物語の核心にまで踏み込む重要な役割を果たしたのです。
能力の本質に迫る
けものの巨人が恐れられる理由は、その見た目の異様さだけではありません。
ジーク・イェーガーが継承してからは特に、戦術的な力を持つ「戦場の支配者」としての一面が強調されました。
その本質は大きく二つの能力に集約されます。
ひとつは、巨体を活かした圧倒的な投擲能力。
もうひとつは、脊髄液と「叫び」によって人間を巨人に変えるという特殊な支配力です。
この二つが合わさることで、けものの巨人は他の知性巨人とも一線を画す存在となりました。
投擲による圧倒的な制圧力
けものの巨人を語る上で、まず欠かせないのが「投げる力」です。
ジークの巨人体は腕が異様に長く、その長い腕から繰り出される投石はまるで大砲のような威力を誇ります。
実際、シガンシナ区の決戦では、近くにあった瓦礫や小石を握りつぶし、次々と投げつけて兵士たちを壊滅状態に追い込みました。
ただ投げるだけではありません。ジークの投擲はまるで野球選手の豪速球のように正確で、遠距離から狙い澄ました一撃を放ちます。
その一撃で馬ごと兵士をなぎ倒し、陣形を一瞬で崩壊させてしまうのです。
調査兵団の兵士たちが恐怖に震えたのも当然でした。
「逃げ場のない広い戦場で、空から石が雨のように降ってくる」――その場にいるだけで絶望感を味わう、圧倒的な攻撃手段だったのです。
けものの巨人の投擲は、単なる物理的破壊力ではなく、兵士たちの心を折る心理的な恐怖を与えました。
「近づくことすらできない」という事実が、戦場での優位を決定づけたのです。
脊髄液と“叫び”がもたらす特殊な支配力
けものの巨人のもうひとつの本質は、「脊髄液」と「叫び」を使った支配の力です。
ジークはフリッツ王家の血を引いていたため、通常の巨人化能力者にはない特殊な力を発揮できました。
それが、自らの脊髄液を人間に摂取させ、その後に自分の叫びを合図にして巨人化させるというものです。
この能力は単独でも十分に脅威ですが、戦場で使われた場合の影響は計り知れません。
例えば、ワインに脊髄液を混ぜ、無自覚のまま兵士たちに飲ませておく。
そして決定的な瞬間に叫びを放てば、一斉に無数の巨人が誕生するのです。
その巨人たちはジークの命令に従い、無垢の巨人として敵を襲います。
一瞬で戦況をひっくり返すその様は、兵器以上の破壊力を持つ“支配の力”といえるでしょう。
この能力は、けものの巨人が単なる「強い巨人」ではなく、戦争の行方そのものを左右する存在であることを示しています。
シガンシナ区決戦の衝撃
けものの巨人の力が最も強烈に描かれたのは、シガンシナ区での決戦です。
壁を取り戻そうとする調査兵団と、それを阻むジーク率いる巨人たち。
その中で、けものの巨人は戦況を一変させる圧倒的な存在感を放ちました。
恐怖と絶望、そして一筋の希望が交錯するこの戦いは、『進撃の巨人』の中でも屈指の名シーンとして語り継がれています。
投石で兵団を追い詰めた恐怖の場面
シガンシナ区外の平原に布陣した調査兵団を、けものの巨人は遠距離から見下ろしていました。
そして周囲に転がる瓦礫を集め、両手で握りつぶすと――次の瞬間、野球投手さながらのフォームで兵団めがけて投げつけたのです。
「ゴオォォォォッ!」という轟音とともに、無数の石が雨のように降り注ぎ、馬も兵士も一瞬で吹き飛びました。
その破壊力はまるで榴弾砲の連射のようで、調査兵団は成す術なく追い詰められていきます。
特に描かれたのは、馬を失った兵士たちの絶望です。立体機動装置があっても、馬がなければ壁に戻ることはできない。
つまり「戦えないし、逃げることもできない」という状況に追い込まれたのです。
石を握りつぶしながら冷静に投げ続けるジークの姿は、まさに戦場を支配する王のようでした。
その異様さと恐怖が、けものの巨人の存在を一気に際立たせました。
リヴァイの奇襲で露わになった弱点
しかし、けものの巨人にも決定的な弱点がありました。
それは「近接戦闘に弱い」という点です。
ジークの投擲は遠距離では無敵に近い破壊力を持ちますが、近距離での対応力は決して高くありません。
その弱点を突いたのが、調査兵団最強の兵士――リヴァイでした。
投石で兵団を追い詰めている最中、リヴァイは単独で一気に間合いを詰めます。
超高速の立体機動で獣の腕や肩を次々と切り裂き、ジーク本体を引きずり出したのです。
あまりの速さにジークは反応すらできず、一方的に叩きのめされました。
圧倒的な力で支配していたけものの巨人が、たった一人の兵士に敗北する――そのギャップこそが、この戦いを名シーンへと押し上げました。
この瞬間、けものの巨人の強さと同時に「万能ではない」という現実が突きつけられたのです。
中東連合戦で示された限界
けものの巨人が恐怖の象徴として描かれたのはシガンシナ区決戦でしたが、時代が進むにつれてその力は通用しなくなっていきます。
その決定的な転換点が、中東連合との戦争です。
ここでは、けものの巨人が圧倒的な兵器の前に苦戦を強いられる姿が描かれました。
巨人が人類にとって“絶望そのもの”だった時代の終焉を告げる戦いでもありました。
近代兵器に対抗できなかった巨人の姿
中東連合との戦争でマーレ軍は、巨人の力を使って要塞を攻め落とそうとしました。
けものの巨人もその先頭に立ち、巨体と投擲で敵を制圧しようとします。
しかし、この時代の敵はもう巨人だけを恐れる存在ではありませんでした。
要塞には「対巨人砲」と呼ばれる徹甲弾を撃ち出す大砲が配備されていたのです。
その威力は、かつてなら無敵と思われていた鎧の巨人すら簡単に貫くほど。
投擲で広範囲を攻撃できるけものの巨人も、砲弾が降り注ぐ中では思うように動けませんでした。
戦場はすでに、巨人の力だけでは支配できない時代へと移り変わっていたのです。
これは単なる戦闘の一場面ではなく、「巨人兵器の限界」をはっきりと示す場面でした。
ジークにとっても、それは自分たちが“絶対的な存在ではない”ことを痛感させられる瞬間だったのです。
パラディ島奇襲の真実
中東連合戦での勝利の後、マーレは再びパラディ島を狙います。
この奇襲作戦には、けものの巨人も深く関わっていました。
しかしその裏には、単なる戦術以上の残酷な計画が隠されていたのです。
無垢化戦術に込められた残酷な選択
ジークは自らの脊髄液を兵士や住民に摂取させ、決定的な瞬間に「叫び」を使って一斉に巨人化させました。
これは戦術的に見れば非常に効果的です。
一度に多数の兵士を巨人に変えれば、敵を一瞬で圧倒できるからです。
しかし、その裏にはあまりにも残酷な現実がありました。
巨人化させられた兵士たちは、もう二度と人間に戻れない。
しかも彼らは自我を失い、無垢の巨人として仲間を襲う存在になってしまうのです。
ジークは冷静にこの方法を選びました。
「勝つためには犠牲が必要」――そう割り切っていたからです。
けれども、仲間を犠牲にしてまで勝利をつかむ姿は、多くの人に強い衝撃を与えました。
それは戦術というよりも、人間性を切り捨てた選択であり、ジークの思想の一端を垣間見せる出来事でもあったのです。
「地鳴らし」以降の思想と動機
やがて物語は「地鳴らし」という世界規模の破壊へと突き進みます。
その中でジークが掲げたのは、他の誰も想像しなかった極端な理想でした。
それは、巨人の力の利用でも、支配でもない。
「エルディア人そのものを終わらせる」という計画だったのです。
安楽死計画という極端な理想
ジークが提唱したのは「安楽死計画」と呼ばれるものでした。
エルディア人が子どもを作らなければ、やがては自然と絶滅し、世界から巨人の脅威も憎しみも消える――。
それが彼の考えた唯一の解決策でした。
その思想はあまりに極端で、多くの人が受け入れがたいものでした。
しかし、ジークは本気でそれを実行しようとしていました。
「自分たちが存在する限り、世界に平和は訪れない」
「だからこそ、自らの世代で終わりにするべきだ」
その言葉には、彼の冷徹さと同時に、深い絶望がにじんでいました。
ジークにとって安楽死計画は単なる戦略ではなく、自分自身が見出した“救済”の形だったのです。
家族との関係が形作ったジークの行動原理
なぜジークはそこまで極端な思想に至ったのか。
その背景には、幼少期からの家族との関係がありました。
ジークの両親は、反マーレ派として活動しており、幼い彼をも計画に巻き込みました。
ジークは「戦士候補生」としてスパイのような役割を課され、常に大人たちの期待と重圧にさらされていたのです。
そんな中で彼を救ったのが、けものの巨人の前任者であるトム・クサヴァーでした。
クサヴァーは「君は君のままでいい」と言い、ジークに安らぎを与えました。
しかしその一方で、両親からは「戦え」「期待に応えろ」と迫られ続けました。
結果としてジークは、両親を裏切る形でマーレに密告し、彼らを破滅へと追いやります。
こうした家族との葛藤は、ジークの思想に大きな影を落としました。
「親に期待され、利用され、裏切り、孤独を知った」経験が、安楽死計画という冷徹な理想へとつながっていったのです。
獣の巨人(ジーク・イェーガー)の最後
けものの巨人の物語は、ジーク・イェーガーという一人の男の人生と重なっていました。
その最後は、戦場における華やかな勝利ではなく、静かで冷徹な結末でした。
ジークは「安楽死計画」という極端な理想を掲げ、エレンとともに世界を変えようとしました。
しかし物語が進むにつれ、彼の理想と現実の間には深い溝があることが明らかになっていきます。
そして最終局面で、彼の命運を決めたのは宿命のように付きまとった人物――リヴァイでした。
リヴァイによる終幕とその意味
「リヴァイとジーク」。
この二人の対峙は『進撃の巨人』の中でも繰り返し描かれてきました。
シガンシナ区決戦ではリヴァイの奇襲に敗れ、パラディ島での戦いでも追い詰められ、幾度となく死の淵に立たされたジーク。
それでも彼は生き延び、思想を抱き続けました。
しかし地鳴らしの最中、ついにその因縁に終止符が打たれます。
巨人の力を使ってなお、ジークは決定的に「人間」としての弱さを抱えていました。
エレンの暴走を止めるため、自ら姿を現したジークに、リヴァイは迷いなく刃を振るいます。
それは一瞬の出来事でした。
シガンシナで投石を繰り返していたあの巨人も、脊髄液で兵士を操った恐怖の存在も、最期はただの男として斬られたのです。
この結末は、巨人の時代の終わりを象徴していました。
どれほどの力を持っていても、結局は人間同士の想いと選択の前には抗えない。
リヴァイの刃によってジークが倒れた瞬間、それが明確に示されたのです。
他の九つの巨人との相性
けものの巨人の能力は独特であり、他の九つの巨人との相性を考えることで、その戦術的な位置づけがよりはっきりします。
投擲による遠距離攻撃、脊髄液を用いた支配の力。
これらは単純な殴り合いの巨人戦ではなく、「支援」や「制圧」といった立ち回りに強みを持っていました。
鎧・女型・進撃との比較で見える立ち回り方
例えば鎧の巨人。
全身を硬質化で覆うライナーの鎧は、防御力と突撃力に特化しています。
対してけものの巨人は耐久力で劣りますが、遠距離から投石を浴びせれば、鎧ですら崩すことが可能です。
女型の巨人は機動力と柔軟性が売りです。
アニが操る女型は、硬質化と格闘術で接近戦に優れています。
けものの巨人は逆に接近されると脆いですが、遠距離で徹底的にけん制すれば、女型を寄せつけない戦術も取れるでしょう。
そして進撃の巨人。
エレンが操る進撃はシンプルに攻撃力が高く、粘り強い格闘で前線を切り開く役割を果たします。
その一方で戦場を広く見渡す余裕はなく、周囲の援護に弱い面がありました。
けものの巨人の遠距離投擲は、その弱点を補うように戦場全体をコントロールできたのです。
つまりけものの巨人は、単独で最強の存在ではないものの、他の巨人と組み合わせることで真価を発揮する“司令塔型”の巨人だったといえます。
表にまとめると、その立ち位置がより分かりやすくなります。
巨人 | 特徴 | けものの巨人との関係 |
---|---|---|
鎧の巨人 | 防御と突撃に特化 | 遠距離攻撃で崩せるが接近戦では劣勢 |
女型の巨人 | 機動力と格闘術 | 接近されると不利だが遠距離から封殺可能 |
進撃の巨人 | 粘り強い攻撃力 | 投擲で戦場全体を支配し、補完関係にある |
こうして見ると、けものの巨人は単なる“投げる巨人”ではなく、戦場全体の流れを操る役割を担っていたことがわかります。
まとめと感想
けものの巨人は、進撃の巨人という物語の中で特異な役割を持った存在でした。
その力は単純な破壊ではなく、戦術や心理に深く関わるものだったのです。
ジーク・イェーガーが継承してからは、投石による圧倒的な制圧力や、脊髄液と叫びによる支配力が描かれました。
そして彼の思想――安楽死計画という極端な理想――は、物語を大きく揺さぶる要素となりました。
しかし最期に待っていたのは、華々しい勝利ではなく、リヴァイの刃によるあまりにあっけない幕引きでした。
その姿は、巨人の時代の終焉を象徴するようでもありました。
破壊ではなく問いを残したけものの巨人
けものの巨人が残したものは、単なる戦場での恐怖ではありません。
「力とは何か」
「民族の未来とは何か」
「人はなぜ争い続けるのか」
こうした問いを、ジークの存在を通じて私たちに突きつけたのです。
彼の選択が正しかったのかどうかは、今も読む人によって意見が分かれるでしょう。
けれども、その問いかけこそが、進撃の巨人という作品を深いものにした理由の一つでした。
けものの巨人は、破壊するだけの存在ではなく、最後には「考えさせる存在」として物語に刻まれたのです。

アニメ・映画が大好きで毎日色んな作品を見ています。その中で自分が良い!と思った作品を多くの人に見てもらいたいです。そのために、その作品のどこが面白いのか、レビューや考察などの記事を書いています。
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