「『クズの本懐』のアニメ、やばすぎる……」
そんな声がSNSやレビューサイトで今も飛び交っています。
一見、繊細な青春恋愛ものに見えて、実際は“人間の欲と孤独”をむき出しに描く問題作。
倫理観を試すような関係性、報われない恋、そして誰もが「自分も少しはクズかもしれない」と感じてしまうリアリティ。
この記事では、アニメ『クズの本懐』が「やばい」と言われる理由を深掘りしつつ、作品としての完成度や魅力も紹介します。
視聴前の予習にも、視聴後の余韻整理にも役立つ内容です。
アニメ『クズの本懐』の基本情報
恋愛アニメの中でも、とびきり“リアルで苦しい”と話題になったのが『クズの本懐』です。
一見すると、淡い恋を描く青春ものに見えますが、実際はもっと深く、人間の心の暗い部分をえぐるような物語です。
「好きなのに、手に入らない」「誰かを代わりにしてしまう」「愛と欲の境目がわからない」。
そんな繊細で痛いテーマを、美しい映像と音楽で包み込んだアニメが、この『クズの本懐』です。
ここでは、作品の基本情報とあらすじをもとに、このアニメがどんな世界を描いているのかを紹介していきます。
作品概要
『クズの本懐』は、横槍メンゴによる同名漫画を原作としたテレビアニメです。
2017年1月から3月まで、フジテレビの深夜枠「ノイタミナ」で全12話が放送されました。
制作を担当したのは、アニメ『暗殺教室』などで知られるスタジオLerche。
監督は安藤正臣、脚本は上江洲誠が手がけています。
アニメの放送当時は、「深夜アニメでここまでやるのか」と視聴者の間で話題になりました。
理由は、恋愛や肉体関係を“きれいごと”で描かないリアリティ。
それなのに映像は柔らかく、美しく、まるで光の中で痛みを描くような表現がされています。
オープニング主題歌「嘘の火花」(歌:96猫)は、強がりと切なさを詰め込んだようなアップテンポの曲。
エンディングテーマ「平行線」(歌:さユり)は、報われない恋心を静かに歌い上げる名曲です。
この2曲が、作品全体の雰囲気を見事に表しています。
制作スタッフも実力派が揃っており、キャラクターデザインは黒澤桂子。
繊細な心理を表現するため、表情の一瞬のゆらぎまで丁寧に描かれています。
音楽は横山克が担当し、ピアノやストリングスを中心に、静かで心を締めつけるようなBGMが流れます。
アニメの放送と同時期には実写ドラマ版も放送され、メディアミックス展開としても注目されました。
どちらも原作と同時に最終回を迎える「同時完結」だったため、物語としての完成度も高く、ファンの間では“奇跡のタイミング”と呼ばれています。
放送情報をまとめると、次のようになります。
放送期間 | 放送局 | 放送枠 | 話数 | 主題歌 |
---|---|---|---|---|
2017年1月〜3月 | フジテレビ(ノイタミナ)ほか全国 | 木曜深夜枠 | 全12話 | OP:96猫「嘘の火花」/ED:さユり「平行線」 |
また、Amazon Prime Videoでも全話配信されており、今でも簡単に視聴可能です。
恋愛アニメとしては異色の内容ですが、「痛いほどリアル」「心をえぐられる」といった口コミで再評価されています。
あらすじ
安楽岡花火と粟屋麦。
二人は学校でも注目される“理想の高校生カップル”です。
成績優秀で、美男美女。誰もが「お似合い」と思うような二人ですが、その関係は大きな秘密でできていました。
実は、二人はお互いに別の人を想って付き合っているのです。
花火は、幼い頃から兄のように慕っていた教師・鐘井鳴海に恋をしています。
そして麦は、中学時代に家庭教師をしてくれた音楽教師・皆川茜を今でも忘れられません。
鳴海と茜は同じ高校に勤務しており、しかも同僚。
花火と麦にとって、二人は「絶対に届かない相手」ですが、「近くにいる」存在でもあります。
そんな中、花火と麦は“お互いを代わりにする”という関係を始めます。
「どちらかの恋が叶ったら、この関係は終わりにしよう」
「身体の欲求も、お互いに満たしてあげよう」
まるで契約のように交わされた約束のもと、二人は恋人を演じます。
でも、時間が経つにつれて、二人の心は少しずつ変わっていきます。
ある日、花火は早苗(えっちゃん)という親友に恋される場面があります。
同性である早苗の想いを受け止めきれずに戸惑いながらも、花火は“愛されること”にどこか救われてしまう。
また、麦の前には幼なじみのモカ(のり子)が現れ、「お姫様になりたい」と純粋な愛をぶつけてきます。
しかし麦はその純粋さを受け止めることができません。
誰かを想いながら、別の誰かに触れる。
誰かを傷つけながら、寂しさを埋める。
そのたびに彼らは「自分の心がどれほど弱いのか」を知っていきます。
物語が進むほど、登場人物たちの関係は複雑になっていきます。
鳴海は茜に惹かれ、茜は男たちを弄ぶように恋をします。
花火は鳴海の幸せを願いながらも、心の奥では“壊したい”という衝動を抱えています。
そして麦は、茜の本性を知ってもなお、彼女を忘れられない。
最終的に、花火と麦は互いに「自分の代用品ではいられない」と気づき、別れを選びます。
そこには救いのような、絶望のような静けさが残ります。
アニメの最終回では、雨の中で花火が一人歩き出すシーンがあります。
「もう、誰かの代わりではなく、自分として恋をしたい」
そう呟く花火の姿は、痛みを抱えながらも前に進もうとする“青春の終わり”を象徴しています。
登場人物と声優
『クズの本懐』の登場人物は、全員が“誰かを好きになってしまった人たち”です。
しかし、その“好き”が純粋ではなく、少しずつ歪んでいくところがこの作品の特徴です。
だからこそ、登場人物たちの心情がリアルに伝わり、観る人の胸を締めつけます。
ここでは、主要キャラクターたちの関係性や印象的なシーンを交えて紹介します。
安楽岡花火(CV:安済知佳)
主人公の花火は、見た目も成績も完璧な優等生です。
しかし、その仮面の下には「誰かにちゃんと愛されたい」という寂しさが隠れています。
彼女は幼い頃から慕っていた教師・鐘井鳴海に片思いをしており、その恋が報われない現実に苦しんでいます。
花火が窓辺で鳴海の背中を見つめるシーンでは、安済知佳さんの吐息まじりの声が心の揺れをリアルに表現しています。
麦と一緒にいても、本当の意味で満たされない。その繊細な“空虚さ”を声で伝えきる演技は圧巻です。
粟屋麦(CV:島﨑信長)
麦は、花火の“表向きの恋人”でありながら、心の中では皆川茜を思い続けています。
彼は冷めたように見えて、実はとても情熱的。
茜に向ける視線には、恋というより執着に近い熱が宿っています。
「僕たちは似てるよ、寂しがり屋ってところが」というセリフは、彼の孤独を象徴する言葉です。
島﨑信長さんの低く落ち着いた声が、麦の“冷静さの中の熱”を見事に引き出しています。
皆川茜(CV:豊崎愛生)
音楽教師の茜は、一見すると清楚で優しそうな女性です。
しかし、実際は男性の気持ちを弄ぶような快楽主義者。
彼女は「好かれている自分」を愛しており、人の心を試すような恋愛を繰り返しています。
豊崎愛生さんの柔らかく落ち着いた声が、茜の二面性を際立たせています。
特に、無邪気な笑顔で人を傷つけるシーンはゾッとするほどリアルで、視聴者に強烈な印象を残します。
鐘井鳴海(CV:野島健児)
花火の片思いの相手であり、国語教師の鳴海。
彼はとにかく誠実で、優しすぎるほど純粋です。
その優しさが時に残酷で、花火の想いにもまったく気づかないほど鈍感です。
野島健児さんの穏やかな声が、鳴海の“人の痛みに無自覚な優しさ”を自然に表しています。
茜への恋心を打ち明ける場面では、視聴者の多くが「なぜ花火ではないのか」と胸を締めつけられたでしょう。
絵鳩早苗(CV:戸松遥)
花火の友人であり、同じクラスの女子。
通称「えっちゃん」と呼ばれる早苗は、花火に恋心を抱いています。
同性への恋という難しいテーマを、作品はとても繊細に描いています。
早苗が花火の髪にそっと触れながら、「あなたのこと、好きだよ」と囁くシーンは、本作でも屈指の名場面。
戸松遥さんの感情を抑えた演技が、早苗の痛いほどの想いを美しく表現しています。
『クズの本懐』の登場人物たちは、誰一人として“完全な悪人”ではありません。
それぞれが誰かを好きで、誰かに求められたいと願っている。
その欲望が絡み合い、恋と孤独と後悔が連鎖していく。
人間の「好き」という感情の多様さと残酷さを、彼ら全員で描き出しているのです。
配信状況
『クズの本懐』は、現在もさまざまな動画配信サービスで視聴可能です。
アニメ版は全12話構成で、原作と同時に完結したため、アニメだけでも物語の結末までしっかり楽しめます。
また、見放題サービスが多く、初回無料トライアルを使えば実質無料で視聴することも可能です。
以下の表に、主要な配信サイトの情報をまとめました。
配信サービス | 見放題 / レンタル | 月額料金(税込) | 無料トライアル期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
U-NEXT | 見放題 | 2,189円 | 31日間 | ポイントで原作漫画も読める |
DMM TV | 見放題 | 550円 | 30日間 | アニメに特化した配信数 |
FODプレミアム | 見放題 | 976円 | 14日間 | フジテレビ系列作品が豊富 |
ABEMAプレミアム | 見放題 | 960円 | 14日間 | コメント機能付きで楽しめる |
dアニメストア | 見放題 | 550円 | 31日間 | アニメ専門サービス |
Hulu | 見放題 | 1,026円 | なし(※無料体験終了) | 海外ドラマも豊富 |
Rakuten TV | レンタル | 各話220円〜 | なし | 単話購入型 |
TSUTAYA DISCAS | レンタル(DVD) | 2,052円 | 30日間 | オフライン視聴可(DVD配送) |
このように、主要な動画配信サービスのほとんどで『クズの本懐』を楽しむことができます。
特にU-NEXTは高画質配信で、BGMの繊細な響きまでクリアに味わえるためおすすめです。
※最新の配信情報は公式サイトでご確認ください。
レビューサイトでの評価
『クズの本懐』は放送当時から、視聴者の間で大きな議論を呼びました。
「作画が綺麗なのに内容がえぐい」「恋愛のリアルすぎる地獄」など、強い感情を伴うレビューが多いのが特徴です。
一般的な恋愛アニメとは違い、キャラクターが報われない展開が続くため、見る人によって評価が分かれます。
たとえば、アニメレビューサイト「Filmarks」や「みんなのレビュー」では平均評価★3.8〜4.0前後。
「ストーリーの完成度よりも、心のダメージが忘れられない」といった感想が多く見られます。
中には、「人生で一番疲れる恋愛アニメ」「でも、なぜか何度も見返したくなる」という声も。
この作品が“やばい”と言われるのは、ただ刺激的だからではありません。
誰もが一度は経験したことのある「好きの苦しさ」を、残酷なまでに正直に描いているからです。
最終回で花火が一人で夜道を歩くシーン。
彼女が静かに「私、ちゃんと恋がしたい」とつぶやく瞬間に、視聴者の心にも小さな痛みが残ります。
その“痛み”こそが、『クズの本懐』の真の魅力であり、長く語り継がれる理由なのです。
アニメ『クズの本懐』がやばい理由
『クズの本懐』は、一度観た人が必ずと言っていいほど「やばい」と口にするアニメです。
それは暴力的な描写があるからでも、派手な展開があるからでもありません。
この作品が本当に「やばい」と言われる理由は、人間の“恋愛”という感情を、徹底的に現実的かつ痛烈に描いているからです。
登場人物たちは誰もが「好きな人のために生きたい」と思いながら、結果的に自分の孤独を埋めるために他人を利用してしまいます。
そんな彼らの行動や言葉は、どこか自分にも重なって見えて、観ているうちに胸が苦しくなるのです。
ここでは、視聴者が「このアニメ、やばい……」と感じてしまう4つの理由を、作品の印象的なシーンとともに掘り下げます。
やばい理由①:恋愛観が倫理的にアウト
『クズの本懐』の一番の特徴は、登場人物たちが“恋”を純粋な感情として扱っていないことです。
彼らにとって恋愛は、愛し合うためのものではなく、「寂しさの穴を埋めるための道具」になっています。
主人公の花火と麦は、その象徴のような存在です。
二人はお互いに「好きな人がいる」ことを知りながらも、付き合うふりをしています。
本当の恋人ではないのに、手を繋ぎ、キスをして、体を重ねる。
それは恋ではなく、孤独の“代償行為”に近いものです。
第2話で、花火が「麦くんのこと、好きじゃないけど…寂しいの」と呟くシーンがあります。
この一言が、この作品の根底をすべて表しています。
人は孤独に耐えられない。
だからこそ、たとえ偽物でも誰かとつながりたい。
そんな弱さを描くことで、『クズの本懐』は他の恋愛アニメとはまったく違うリアリティを生んでいるのです。
また、音楽教師・皆川茜の存在も“倫理的アウト”を象徴しています。
彼女は、生徒や同僚の男性たちの好意を楽しみ、わざと嫉妬させるような態度を取ります。
茜は「自分が好かれている状態」が好きなのです。
第7話で彼女が「みんなが私を好きでいれば、それでいい」と微笑むシーンは、背筋が凍るほど美しく、同時に残酷です。
恋愛が「純粋な気持ち」ではなく、「承認欲求と孤独の取引」として描かれている。
そのリアルさが、この作品の“やばさ”の核心なのです。
やばい理由②:ドロドロの人間関係
『クズの本懐』では、友情、恋愛、そして欲望が絡み合い、次第に誰も幸せになれない状況へと陥っていきます。
表面的には高校生たちの恋愛劇ですが、実際は“人間関係の崩壊”を描いたドラマです。
まず印象的なのが、花火の親友・絵鳩早苗(えっちゃん)の存在です。
早苗は同性である花火に恋をしており、自分の気持ちを抑えられなくなってしまいます。
ある夜、花火の部屋に泊まりに来た早苗は、眠る花火にそっとキスをします。
「これで少しだけ、あなたを私のものにできた」と涙を流すシーンは、切なくも苦しい場面です。
この瞬間、友情と恋愛の境界が崩れてしまいます。
また、麦の幼なじみ・のり子(モカ)は、麦を“王子様”のように理想化しており、自分を「お姫様」と呼ばせています。
幼い頃に交わした一言を信じ続け、現実を見ないモカの姿も、純粋であるがゆえに痛々しい。
麦が「俺はもう、あの頃のお前の王子様じゃない」と突き放すシーンでは、観る側も心がえぐられます。
教師陣もまた、表と裏の顔を持っています。
茜は男性たちを誘惑し、鳴海は茜に惹かれていく。
花火はその姿を見て心を壊していきます。
「誰が一番クズなのか」ではなく、「誰が一番孤独なのか」という問いが浮かぶ構成になっており、単なる恋愛ドラマでは終わらせません。
物語が進むほどに、登場人物たちの関係は複雑に絡み、誰も救われない。
この“泥沼”こそが、『クズの本懐』の本質的なやばさなのです。
やばい理由③:最終回の胸糞展開
『クズの本懐』の最終回は、まさに“静かな絶望”です。
最終話で描かれるのは、恋が叶うこともなく、誰も報われない現実。
それでも、どのキャラクターも「次へ進むための痛み」を受け入れます。
花火と麦は、互いに本当の恋を求めて別れることを決意します。
二人の最後の会話はとても静かで、まるで夢が終わるような儚さがあります。
「私たちは、寂しさでつながってただけだったね」
「うん。でも、楽しかったよ」
そう言って微笑み合う二人の姿は、幸福ではないのに、どこか救いがあります。
第12話のラストシーンで、花火が春の光の中を一人で歩く姿が映ります。
もう誰にも依存しない。
本物の恋を、自分の意思で探す。
そう語るような表情が印象的です。
この結末には賛否があります。
「胸糞悪い」「何も救いがない」と感じる人も多いですが、逆に「現実的で美しい」と評価する人も少なくありません。
ハッピーエンドでもバッドエンドでもない、まさに“リアルエンド”。
そのリアルさが、視聴後に心をざらつかせ、「やばい」と感じさせる理由なのです。
やばい理由④:共感と嫌悪が同居するリアリティ
『クズの本懐』が他の恋愛アニメと決定的に違うのは、登場人物たちがあまりにも“人間的”であることです。
誰もが嘘をつき、誰かを傷つけ、そして自分も傷ついていく。
その過程がリアルすぎて、観ているうちに「自分も同じようなことをしたことがあるかもしれない」と感じてしまうのです。
花火が鳴海を見つめる視線、麦が茜を想って苦しむ表情、早苗の抑えきれない愛情。
どの場面にも、「こんな気持ち、わかる」と思わせる瞬間があります。
だからこそ、共感と嫌悪が同時に湧き上がる。
「こんなことしてはいけない」と思いながら、「でも、気持ちは理解できる」と感じてしまうのです。
特に印象的なのは、第8話で花火が「人を好きになるって、こんなに醜いのかな」と呟くシーンです。
この一言が、この作品が投げかけるすべての問いを表しています。
“恋”という感情の裏には、誰にも見せたくない弱さや醜さがある。
それを直視することができる人だけが、この作品を最後まで見届けられるのです。
やばい理由 | 内容の特徴 | 心に残る要素 |
---|---|---|
恋愛観が倫理的にアウト | 恋が寂しさと欲望で構成されている | 「偽物でもいい」という切なさ |
ドロドロの人間関係 | 友情・愛情・欲望が絡み合う | 誰も悪くないのに皆が傷つく |
最終回の胸糞展開 | 誰も報われないが、静かな救いがある | 「終わり」が美しくも苦しい |
共感と嫌悪のリアリティ | 自分の恋愛経験と重なる | 心をえぐるような現実感 |
『クズの本懐』は、恋愛を“美しいもの”として描かない作品です。
それでも、誰かを想う痛みや、孤独を抱える気持ちはとても真実味があります。
だからこそ、観終えたあとも心に長く残り、「やばい」と感じながらも、もう一度見たくなる。
それがこのアニメの最大の魅力であり、恐ろしさでもあるのです。
アニメ『クズの本懐』の魅力
ここまで「やばい」と言われる理由を見てきましたが、同時に『クズの本懐』は多くの人に“忘れられない作品”として愛されています。
それは、この作品が単なるドロドロ恋愛アニメではなく、映像・音楽・心理描写のすべてが高い完成度で融合しているからです。
観ていると、まるで自分の感情が画面の中に映っているような錯覚を覚えます。
痛いのに美しい。苦しいのに目を離せない。
その矛盾こそが、このアニメの最大の魅力です。
ここからは、『クズの本懐』が多くの人の心を掴んで離さない“4つの魅力”を紹介します。
魅力①:映像美と音楽演出の完成度
まず最初に語るべきは、アニメとしての完成度の高さです。
制作を担当したのは、スタジオLerche。『暗殺教室』などでも知られるこの制作会社は、繊細な心理描写と映像表現を得意としています。
『クズの本懐』では、光と影、そして色彩の使い方が圧倒的に美しいのです。
たとえば、花火と麦が夜の教室で向き合うシーン。
カーテン越しに月明かりが差し込み、二人の間に淡い青の影が落ちます。
手を伸ばせば届く距離なのに、心だけが遠く離れている。
その“距離”を光の演出だけで語るのは、まさに職人技です。
また、キャラクターの表情の描写も丁寧で、特に花火の瞳の動きには細やかな感情が込められています。
悲しみを隠そうと笑う瞬間、唇が少し震えるような作画は、まるで実写映画のよう。
視聴者は言葉がなくても、彼女の心の揺れを感じ取ることができます。
音楽演出も秀逸です。
横山克によるBGMはピアノを中心にした静かな旋律が多く、感情を煽ることなく、物語に寄り添います。
特に第12話のラストで流れるピアノの余韻は、視聴後も心に残り続けるほどの美しさです。
『クズの本懐』は、ただの恋愛アニメではなく、「美術と音楽で心を描くアート作品」なのです。
魅力②:心理描写の深さ
この作品の真髄は、何よりも登場人物の“心の声”にあります。
全編を通して多用されるモノローグ(心の独白)は、登場人物の痛みや迷いをそのまま観る人に届けます。
花火は、鳴海を思いながらも麦に抱かれるたびに、自分を責めます。
「これは嘘。わかってる。だけど、寂しさを抱きしめてる。」
この言葉には、恋をしたことのある人なら誰もが覚えのある苦しさが詰まっています。
また、同性の早苗(えっちゃん)との関係も、ただの友情や恋愛ではなく、「存在の承認」として描かれます。
早苗は花火に想いを伝えたあと、「嫌いになってもいい、忘れないで」と言います。
このセリフは、恋愛の形を超えた“人としての愛”を象徴しています。
誰かに自分の存在を認めてほしい。
その願いがどれほど切実で、美しいものなのか。
それを静かに教えてくれるのが、この作品の心理描写です。
さらに、モノローグの言葉選びも秀逸です。
「愛してるって言葉、誰のための言葉なんだろう。」
「私が欲しいのは、あの人の心じゃなくて、私を見てくれるその目。」
詩のようでありながら、どこかリアルで、心に刺さる。
まるで登場人物たちが視聴者の代弁者になっているような感覚に陥ります。
魅力③:音楽で表現される孤独
『クズの本懐』は、音楽面でも多くのファンを生みました。
オープニング曲「嘘の火花」(96猫)とエンディング曲「平行線」(さユり)。
この2曲が、作品全体の“孤独と痛み”を見事に表現しています。
「嘘の火花」は、激しさの中に哀しみがある曲です。
イントロのギターリフから、主人公たちの心の焦燥感が伝わります。
「愛なんて信じられないけど、求めてしまう」という矛盾した想いを、96猫の繊細な歌声が見事に表現しています。
一方、「平行線」は物語を締めくくる静かな余韻を持つ曲。
“交わらない二人の線”を意味するタイトルは、花火と麦の関係を象徴しています。
「私たちは平行線、でも同じ空を見てた」という歌詞の一節は、最終回の映像と重なるように響き、観終わった後に涙を誘います。
さらに、作中のBGMも計算し尽くされています。
ピアノや弦楽器の旋律が場面ごとに絶妙な間で流れ、感情の起伏を自然に支えています。
特に花火が一人で部屋に座り、鳴海を思い出す場面では、音がほとんど消え、時計の針の音だけが響きます。
この“静寂の演出”こそが、彼女の孤独を最も強く語っているのです。
音楽が「説明」ではなく「感情の代弁」として機能している。
それが、『クズの本懐』という作品が多くの人の記憶に残る理由のひとつです。
魅力④:倫理を超えて描く「人間らしさ」
この作品の最大の魅力は、登場人物たちが「人間臭く」、そして「本音で生きている」ことです。
彼らは嘘をつきます。
誰かを裏切ります。
それでも、本気で誰かを愛そうともがき続けます。
花火は偽物の恋をしながらも、いつか本物の恋ができることを信じていました。
麦は茜を求め続け、傷つけられてもなお人を好きでいられる自分に気づきます。
早苗は報われない恋を経験しても、「それでも誰かを想うことの美しさ」を知ります。
この作品には「正解」も「ハッピーエンド」もありません。
それでも、登場人物たちはみんな自分の弱さを受け入れようとする。
そこにこそ、人間らしい美しさがあります。
特に最終話での花火の独白が象徴的です。
「好きって言葉、怖い。でも、言えるようになりたい。」
この言葉には、成長や再生の希望が込められています。
恋愛というテーマを通して、“生きることの不器用さ”を描いているのです。
『クズの本懐』は、恋の教科書ではなく、「人間とは何か」を描いた心理ドラマなのです。
魅力のポイント | 内容の特徴 | 印象的な要素 |
---|---|---|
映像美と音楽演出 | 光と影の表現が美しく、映像が感情を語る | 教室の月明かりのシーン |
心理描写の深さ | モノローグで登場人物の本音を描く | 花火と早苗の静かな告白 |
音楽による孤独の演出 | 主題歌とBGMが心情にリンク | 「平行線」が流れる最終回 |
倫理を超えた人間らしさ | 嘘や欲望も含めて“生きる”姿を描く | 花火の再生を象徴するラスト |
まとめ
『クズの本懐』の“やばさ”とは、ただのドロドロした恋愛ではありません。
それは、人間の本音を容赦なく暴き出すリアリズムです。
恋愛の美しさも、汚さも、すべてをひとつの物語に閉じ込めたこの作品は、観る人の心を強く揺さぶります。
誰かを好きになることは、時に苦しく、時に醜くもある。
それでも人は、また誰かを好きになってしまう。
『クズの本懐』は、その“どうしようもなさ”を肯定してくれるアニメです。
もしあなたが、「恋に疲れた」「人を信じるのが怖い」と感じているなら、この作品は必ず心を動かすでしょう。
それは、あなたの中にもある“本音”を優しく照らしてくれるからです。
静かに、痛く、美しく。
『クズの本懐』は、見るたびに新しい感情を呼び起こす、恋と人間の真実を描いた名作です。

アニメ・映画が大好きで毎日色んな作品を見ています。その中で自分が良い!と思った作品を多くの人に見てもらいたいです。そのために、その作品のどこが面白いのか、レビューや考察などの記事を書いています。
詳しくはこちら
コメント