アニメ「蜘蛛ですが、なにか?」はネット上で「ひどい」と評価されることがあります。
これから視聴しようと思っている人にとっては気になるポイントでしょうし、視聴済みの人にとっては共感できるかどうかが重要です。
本記事では「ひどい」と言われる理由と、逆に楽しめる魅力をあわせて解説します。
アニメ『蜘蛛ですが、なにか?』の基本情報
アニメ『蜘蛛ですが、なにか?』は、数ある異世界転生ものの中でも特にユニークな立ち位置を持つ作品です。
多くの転生ものでは勇者や魔法使いとして活躍するのが王道ですが、この作品の主人公はなんと「蜘蛛」として生まれ変わります。しかも迷宮にうごめく下級モンスターの一匹にすぎず、最初は弱くて食べられる側。そこから必死に生き抜き、少しずつ成長していく姿が描かれるのです。
そのサバイバル感と、主人公の明るく前向きなキャラクターが視聴者を引きつけました。ここではまず作品全体の概要と物語のあらすじを見ていきましょう。
作品概要
『蜘蛛ですが、なにか?』は、馬場翁が小説投稿サイトで連載した小説を原作に持ち、KADOKAWAから刊行されている人気シリーズです。アニメは2021年1月から7月にかけて全24話が放送され、2クールにわたって描かれました。
アニメーション制作はミルパンセ。監督は板垣伸が務め、CGと手描き作画を組み合わせた挑戦的な映像づくりが行われました。とりわけ主人公である蜘蛛子はフル3DCGで表現され、軽快に動き回りながらも表情豊かに感情を伝える工夫が凝らされています。
声優陣も魅力的です。蜘蛛子を演じたのは悠木碧。彼女の早口で勢いある独白はまるで漫才のようで、視聴者を飽きさせません。他にも、シュン役の堀江瞬、カティア役の東山奈央、ソフィア役の竹達彩奈など、豪華なキャストが作品を支えています。
さらに音楽面も作品を盛り上げました。安月名莉子が歌う前期オープニング「keep weaving your spider way」や、主人公自身(悠木碧)が歌う前期エンディング「がんばれ!蜘蛛子さんのテーマ」は、作品の明るさや必死さを軽快に表現。後期オープニング「Bursty Greedy Spider」(鈴木このみ)、後期エンディング「現実凸撃ヒエラルキー」も強烈なインパクトを残しました。
こうした音楽、キャラクター、そして独特の映像表現が合わさって、放送当時から大きな話題となったのです。
あらすじ
物語は、日本のとある高校で起きた謎の大爆発から始まります。巻き込まれた生徒や教師たちは命を落とし、気がつくと異世界に転生していました。主人公の「私」もその一人ですが、彼女が転生した姿は人間ではなく小さな蜘蛛の魔物。
生まれ落ちたのは巨大なダンジョン「エルロー大迷宮」。周囲には自分よりも強い魔物がうようよしており、ちょっと油断すれば即座に捕食されてしまう過酷な環境です。
蜘蛛子は、持ち前のポジティブさとゲームのような「スキルシステム」を駆使し、必死にサバイバルを続けていきます。最初は弱々しい蜘蛛糸や小さな毒牙しか武器がありませんが、戦闘や食事を重ねてレベルアップし、徐々に強力なスキルを獲得していくのです。
物語が進むにつれて、蜘蛛子の活躍は迷宮を飛び出し、やがて人間の国や魔族の戦いにまで関わっていきます。さらに、転生したクラスメイトたちの物語も並行して描かれ、異世界でそれぞれの人生を歩む姿が少しずつつながっていく展開は、大きな魅力のひとつです。
特に印象的なのは、蜘蛛子が初めて強敵である地竜と遭遇するシーンです。圧倒的な力を前に「絶望した!」と叫びつつも、なんとか逃げ延びる姿はコミカルでありながら緊張感たっぷり。そこから少しずつ成長していく過程が、視聴者に強い共感と応援したくなる気持ちを抱かせます。
まとめると、『蜘蛛ですが、なにか?』はただの異世界冒険ファンタジーではなく、命がけのサバイバルと軽快なコメディが融合した作品です。蜘蛛というユニークな主人公の成長を通して、「生きることのしぶとさ」と「仲間たちの物語」が同時に描かれる点が、多くの人を惹きつけてやまない理由といえるでしょう。
登場人物と声優
『蜘蛛ですが、なにか?』を語る上で欠かせないのが、個性豊かなキャラクターたちと彼らを演じる声優陣です。主人公である蜘蛛子を中心に、人間サイドや魔族サイドなど多彩な人物が登場し、それぞれの視点から物語が進んでいきます。
まず、最も印象的なのはやはり主人公の蜘蛛子。小さな魔物からスタートし、ひたすら「生き延びるため」に戦い続ける姿が作品全体の軸になっています。彼女を演じるのは悠木碧。とにかく早口でテンポよくしゃべるモノローグは、アニメの代名詞といえるほど。蜘蛛糸で相手を絡め取って「よっしゃ勝った!」と叫ぶシーンや、地竜に出会った時の絶望と自虐混じりのセリフなど、彼女の声があったからこそコミカルさと緊張感が両立しています。
一方で、人間に転生したクラスメイトたちも物語の重要な柱です。王子として生まれたシュン、エルフに転生したフィリメス、そして後に魔族サイドへと大きく関わっていくソフィアなど、それぞれのキャラクターに独自の運命が待ち受けています。例えば、シュンが「勇者」として成長していく姿は王道ファンタジーそのものですが、蜘蛛子とのつながりが少しずつ明らかになっていく展開には驚かされるでしょう。
ここで、主な登場人物と声優を表でまとめます。
キャラクター | 概要 | 声優 |
---|---|---|
蜘蛛子(私) | 主人公。小さな蜘蛛の魔物に転生。生き延びるため必死に戦い成長していく | 悠木碧 |
シュン(シュレイン) | 王国の王子に転生したクラスメイト。勇者の称号を受け継ぐ | 堀江瞬 |
カティア(カルナティア) | シュンの親友。転生後は女性の姿に。 | 東山奈央 |
ソフィア | 美しい吸血鬼に転生した少女。冷徹だがカリスマ的存在 | 竹達彩奈 |
フィリメス | 元教師の岡崎先生。エルフに転生し、生徒を守ろうとする | 森なな子 |
アリエル | 魔王にして蜘蛛子の大きな因縁の相手 | 上坂すみれ |
キャストを見てもわかる通り、主人公だけでなく人間側や魔族側も実力派声優が演じており、作品に厚みを与えています。蜘蛛子の軽快な独白と、人間側のシリアスな群像劇が交互に描かれる構成だからこそ、声優陣の演技力が作品を支えているのです。
配信状況
アニメを見たいと思ったとき、どのサブスクで視聴できるのかは大事なポイントです。『蜘蛛ですが、なにか?』は現在、多くの動画配信サービスで配信されています。ありがたいことに、ほとんどのサービスで全24話を一気に楽しむことが可能です。
特に嬉しいのは、無料トライアル期間を利用すれば、実質タダで視聴できてしまう点です。たとえば、U-NEXTなら31日間無料トライアルがあり、その間に見終わることも可能。Amazonプライムビデオなら月額も比較的安く、学生であればさらに割引が効きます。
以下の表に主な配信サービスと料金プランをまとめました。
配信サービス | 月額料金(税込) | 無料トライアル | 配信状況 |
---|---|---|---|
U-NEXT | 2,189円 | 31日間 | 全24話配信中 |
dアニメストア | 550円 | 31日間 | 全24話配信中 |
Amazonプライムビデオ | 600円(学生は300円) | 30日間 | 全24話配信中 |
Hulu | 1,026円 | 2週間 | 全24話配信中 |
Netflix | 790円〜1,980円 | なし | 全24話配信中 |
このように複数の選択肢があるので、自分のライフスタイルや好みに合わせて選べるのも嬉しいポイントです。
「今すぐ全部見たい!」という人は無料トライアルの長いU-NEXTが便利ですし、「安さ重視」ならdアニメストアがおすすめ。普段から映画やバラエティも楽しむならAmazonプライムやNetflixといったサービスを選ぶのも良いでしょう。
※詳しい配信状況は公式サイトをご覧ください。
レビューサイトでの評価
では実際に、アニメ『蜘蛛ですが、なにか?』はどのように評価されているのでしょうか。レビューサイトやSNSをのぞくと、「ひどい」という声と「面白い!」という声の両方が見られます。
「ひどい」と感じた人の多くは、主に映像面を理由に挙げています。蜘蛛子のシーンがフルCGで描かれているため、2Dの人間パートと比べて違和感を覚える人がいたのです。また、終盤の展開が駆け足で、原作を知らないとわかりにくい部分があったことも評価を分ける要因になりました。
一方で、「面白い!」という意見も根強く存在します。特に主人公・蜘蛛子のキャラクター性は大好評で、独り言のようなモノローグとポジティブすぎるサバイバル精神に「元気をもらえる」「応援したくなる」という感想が多く寄せられました。
実際に、海外のレビューサイト「Crunchyroll」でも蜘蛛子の声を演じた悠木碧はBest VA Performance(日本語部門)にノミネートされ、エンディングテーマ「がんばれ!蜘蛛子さんのテーマ」も音楽部門で話題になりました。
評価を総合すると、映像やテンポに不満を抱く人もいる一方で、キャラクターとストーリー性に魅力を感じる人が多い、まさに賛否両論のアニメといえるでしょう。
アニメ『蜘蛛ですが、なにか?』がひどいと言われる理由
放送当時、アニメ『蜘蛛ですが、なにか?』は大きな注目を集めました。主人公が蜘蛛に転生するという意外性と、軽快なギャグと本格的な異世界戦記を合わせた独特の作風は強烈なインパクトを残しました。
しかし一方で、レビューサイトやSNSには「ひどい」という感想も少なくありませんでした。その背景にはいくつかの明確な理由があります。ここでは、代表的な4つのポイントを整理して見ていきましょう。
ひどい理由①:CG表現と作画のクオリティの差
まず最も多くの視聴者が指摘したのは、映像面のアンバランスさです。主人公・蜘蛛子のシーンはフルCGで描かれ、他の人間キャラクターのシーンは2D作画で表現されています。
この組み合わせ自体は挑戦的でユニークでしたが、当時の視聴者からは「CGと手描きの落差が目立つ」と不満の声が上がりました。蜘蛛子が迷宮で地竜と戦うシーンでは、蜘蛛子のCGモデルがコミカルに動く一方で、背景や敵キャラの描き込みが追いつかず「チープに見える」という感想もありました。
また、後半になるほど人間パートが増えることで2Dと3Dの差がさらに鮮明になり、映像全体の一体感に欠ける印象を与えたのです。
制作スタッフとしては、蜘蛛子の多彩な表情や動きを出すためにCGを選択したのですが、視聴者にとっては「滑らかに動くCGキャラ」と「やや崩れた作画」のギャップがどうしても気になってしまったのが正直なところでしょう。
ひどい理由②:二軸進行による分かりづらさ
次に挙げられるのは、ストーリー構成のわかりづらさです。『蜘蛛ですが、なにか?』の特徴は、蜘蛛子のサバイバルを描くパートと、人間たちの群像劇を描くパートが同時並行で進む二軸進行にあります。
この構成は、原作を知っている人には「後でつながる伏線」として楽しめるのですが、初めて視聴する人には混乱を招くものでした。蜘蛛子が迷宮で奮闘しているシーンの直後に、人間サイドで王子シュンたちが政治や戦争の話をする場面に切り替わる。両者のつながりがすぐには示されないため、「今どっちの話?」と迷ってしまう人が多かったのです。
例えば、序盤で蜘蛛子が迷宮のサル型魔物の群れと死闘を繰り広げている最中に、人間サイドでは王国の陰謀や転生者たちの学校生活が描かれる回がありました。蜘蛛子のテンション高めなサバイバルと、人間サイドのシリアスな政治劇が切り替わることで、テンポがちぐはぐに感じられたのです。
後半で両者の物語が交差する瞬間は大きな見どころですが、それまでの道のりで「わかりづらい」と感じる人が多かったことが「ひどい」と言われる要因のひとつとなりました。
ひどい理由③:情報量の多さと駆け足展開
さらに視聴者を戸惑わせたのが、膨大な情報量です。『蜘蛛ですが、なにか?』の世界観は、スキルや称号、支配者スキル、そして神や管理者といった設定が複雑に絡み合っています。
アニメでもそれらを説明しようとするのですが、蜘蛛子の軽快なモノローグで次々と専門用語が飛び出すため、初見の人には理解が追いつかないこともありました。例えば「叡智」というスキルで敵の情報を分析する場面では、蜘蛛子が早口で膨大なステータスを読み上げます。原作を知っている人にとっては「きた!」と盛り上がるシーンですが、アニメだけの人には「情報が多すぎて頭に入らない」という感想につながりました。
また、2クールで原作の長い物語を収めるために、後半はどうしても駆け足展開になりました。人間サイドの戦争や転生者たちの関係性が一気に畳み掛けるように描かれたため、「展開が急すぎる」「キャラクターの心情が追えない」という声が目立ったのです。
以下に、視聴者が感じたポイントを簡単に整理してみましょう。
視聴者が戸惑った点 | 内容の具体例 |
---|---|
専門用語が多い | 支配者スキル、深淵魔法、管理者など一度に大量に登場 |
モノローグの速さ | 蜘蛛子が高速でスキルやステータスを読み上げる |
駆け足展開 | 人間サイドの戦争や転生者の因縁が短期間で描かれる |
このように、世界観の厚みが逆に「複雑すぎる」と受け取られてしまったのです。
ひどい理由④:放送スケジュールの乱れ
最後に忘れてはいけないのが、放送スケジュールの乱れです。もともとアニメは2020年放送予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で1年遅れとなり、2021年1月から放送開始となりました。
さらに追い打ちをかけるように、最終話である第24話は直前になって放送延期が発表されました。本来は6月25日に放送予定だったのが、突如として別枠に移動し、7月3日の放送となったのです。ファンにとってはクライマックスを待ち望んでいた矢先の延期であり、落胆の声が広がりました。
特に物語が盛り上がる終盤の戦闘シーンを直前に控えていたため、「一番いいところで止まった」「熱が冷めた」と感じた人も少なくありませんでした。
このような制作上の事情は仕方がない部分もありますが、視聴者にとっては作品の印象を左右する大きな要因となりました。
アニメ『蜘蛛ですが、なにか?』の魅力
放送当時、「ひどい」という評価が目立つ一方で、『蜘蛛ですが、なにか?』には確かな魅力がありました。むしろ、その独自性やユニークさこそが、この作品を忘れられないものにしているとも言えるでしょう。
ここからは、本作が多くのファンの心をつかんだ理由を、具体的な4つの魅力に分けて紹介していきます。
魅力①:蜘蛛子の独白劇と悠木碧の怪演
最大の魅力は、やはり主人公・蜘蛛子の存在です。
普通の女子高生だった「私」が蜘蛛に転生し、迷宮の底で必死にサバイバルを繰り広げる。その過程をほぼ独白だけで描き切るのが、本作の大きな特徴です。蜘蛛子は常に状況を実況するようにしゃべり続け、勝った時には「やったー!」と子供のように喜び、絶体絶命の時には「終わったぁ……」と泣きそうになりながらも何とか立ち上がります。
この独白劇を支えているのが声優・悠木碧の演技です。彼女は蜘蛛子の早口でテンションの高いセリフをテンポよく演じ分け、ときには三段オチのようなギャグを入れ、ときには必死に泣き叫ぶ声で緊張感を高めます。特に、地竜との遭遇シーンで「無理無理無理無理!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」と畳みかける場面は、視聴者の笑いと共感を同時に誘いました。
蜘蛛子のセリフは作品のBGMのように流れ続け、視聴者を一瞬たりとも退屈させない。その勢いこそが、アニメ版の大きな魅力のひとつです。
魅力②:独自のゲーム的システムと緻密な世界観
『蜘蛛ですが、なにか?』は、ただの異世界冒険ものではありません。最大の特徴は、まるでRPGのような「スキルシステム」によってキャラクターが成長していく仕組みです。
蜘蛛子は敵を倒したり食事をしたりするたびに経験値を獲得し、新たなスキルを覚えていきます。最初は「毒耐性」や「糸操作」といったシンプルなものですが、やがて「叡智」や「深淵魔法」など、圧倒的な力を持つスキルを獲得していきます。
このゲーム的な要素が視聴者に「もし自分がこの世界にいたらどうするか」という疑似体験を与えてくれるのです。蜘蛛子がスキル一覧を読み上げながら「こっちの方が効率的か?」と考える姿は、まるでプレイヤーがキャラ育成を試行錯誤しているようでもあります。
さらに、世界観そのものも緻密に作り込まれています。支配者スキル、管理者、神、真なる龍族といった存在が徐々に明らかになり、単なる冒険譚にとどまらない壮大な背景が浮かび上がっていきます。人間と魔族の戦争も絡み合い、最初は蜘蛛一匹の物語が、やがて世界の運命に直結していく構造は見事と言えるでしょう。
以下に、作中で特徴的なスキルとその効果をまとめてみました。
スキル名 | 効果 |
---|---|
毒耐性 | 毒に対する防御力が上がる |
糸操作 | 蜘蛛糸を自在に操れるようになる |
忍耐 | HPを1残して致命傷を回避する |
叡智 | 他者のステータスを分析、追跡可能 |
深淵魔法 | 魂さえ滅ぼす最強クラスの闇魔法 |
このように、ゲームを思わせる仕組みが物語の推進力となり、視聴者を引き込むのです。
魅力③:モンスター転生サバイバルの新鮮さ
異世界転生ものの多くは、人間としてチート能力を得るパターンが主流です。しかし本作では、主人公は「最弱クラスの魔物」である蜘蛛に転生します。この設定自体が非常に新鮮でした。
蜘蛛子は生まれた瞬間から過酷な環境に放り込まれ、強敵から逃げ回りながら必死に成長していきます。最初は小さな蛇やカエル相手でも死ぬか生きるかの戦いで、食事を取ることすら命がけです。
例えば、序盤の「猿の群れ」との戦いでは、圧倒的な数に追われながらも糸と知恵を駆使して一匹ずつ分断し、ようやく勝利をつかみました。この泥臭い戦い方こそが、ほかの転生作品では味わえない魅力でした。
また、モンスターに生まれたからこそ「人間と敵対する立場」になる点も独特です。普通の異世界ものであれば仲間や師匠に助けられて成長していきますが、蜘蛛子の場合は完全に孤独。自分の知恵と根性だけを頼りに生き延びる姿に、多くの視聴者が胸を打たれました。
魅力④:群像劇が交錯するカタルシス
そして、物語後半で明らかになる「群像劇の交錯」もまた大きな魅力です。
最初は無関係に思えた蜘蛛子の迷宮サバイバルと、人間たちの政治劇や転生者たちの物語。しかし終盤にかけて、それらが少しずつつながり、最後には大きなひとつの物語として収束していきます。
特に印象的なのは、人間サイドで「迷宮の悪夢」と呼ばれていた存在が実は蜘蛛子だったと明かされる場面です。ここで視聴者は「これまで別々に描かれていた物語が一本の線で結ばれた!」というカタルシスを味わうことができます。
この構成は確かに分かりづらさも招きましたが、理解できた瞬間に得られる爽快感は他の作品ではなかなか味わえません。群像劇ならではの重厚感と、蜘蛛子の軽快な独白劇が交差する瞬間は、本作が挑戦的でありながら高く評価される所以といえるでしょう。
以下に、本作の二軸進行をわかりやすく整理します。
軸 | 主な内容 | 主なキャラ |
---|---|---|
蜘蛛子パート | 迷宮でのサバイバル、進化とスキル習得 | 蜘蛛子 |
人間・転生者パート | 王国と魔族の戦争、転生者同士の因縁 | シュン、ソフィア、フィリメス |
この二つが終盤で交差し、一気に物語が広がる仕掛けが、『蜘蛛ですが、なにか?』ならではの面白さなのです。
まとめ
アニメ『蜘蛛ですが、なにか?』は、放送当時から「ひどい」と「面白い」の両極端な感想が飛び交った作品でした。なぜそんなにも意見が分かれたのかを振り返ると、この作品の本質が見えてきます。
「ひどい」と「面白い」は紙一重の作品
まず「ひどい」と言われた大きな理由のひとつが、CG表現と作画の差でした。蜘蛛子パートでは3DCGが多用され、人間パートとの質感のギャップが気になったという声も少なくありません。特に序盤の地竜との戦闘シーンでは、ゲームムービーのようなCGとアニメらしい手描き作画が交互に入り混じり、違和感を覚える人もいたでしょう。
しかし一方で、そのCGによって蜘蛛子の素早い動きや糸を使った立体的なアクションが表現できていたのも事実です。蜘蛛の軽快なジャンプや糸を駆使したトリッキーな動きは、手描きだけでは再現が難しかったでしょう。つまり、「ひどい」と「面白い」は見方ひとつで表裏一体だったのです。
さらに、二軸進行の物語も評価が分かれる要因でした。蜘蛛子の迷宮サバイバルと人間たちの戦争が同時進行で描かれるため、「場面転換が多くて混乱する」という声がある一方で、「後に全てがつながる壮大な構成に驚かされた」という感想もあります。実際、蜘蛛子が「迷宮の悪夢」と呼ばれていた存在だと明かされた瞬間は、大きなカタルシスを生み出しました。
加えて、情報量の多さも「駆け足で詰め込みすぎ」と感じられる反面、「原作の壮大な世界観を短い放送枠でここまで描いたのは挑戦的」と捉えることもできます。放送スケジュールの乱れもあり、映像的な完成度に不満が出るのは当然ですが、それでも多くのファンは蜘蛛子の奮闘や声優・悠木碧の怪演に心をつかまれました。
作品の魅力と課題を整理すると、次のようにまとめられます。
評価される点 | 批判される点 |
---|---|
蜘蛛子の独白劇と悠木碧の演技 | CGと作画の質感の差 |
RPG的なスキルシステムと世界観 | 二軸進行による分かりづらさ |
モンスター転生という新鮮さ | 情報過多で駆け足気味の展開 |
群像劇が最後に交錯する構成 | 放送スケジュールの乱れ |
このように、長所と短所がはっきりしているからこそ、強烈に印象に残る作品となったのです。
総じて『蜘蛛ですが、なにか?』は、決して万人受けするタイプではありません。しかし「ひどい」と言われた部分を裏返せば、それこそが他のアニメにはない個性であり、楽しさにつながる要素でもありました。
「笑えるのに緊張する」「作画が荒いけど迫力がある」「分かりづらいけどつながった瞬間が最高」――そんな矛盾を抱えた作品だからこそ、一度ハマると忘れられない強烈な体験を与えてくれるのです。
結局のところ、『蜘蛛ですが、なにか?』は「ひどい」と「面白い」が紙一重で同居している稀有なアニメだったと言えるでしょう。

アニメ・映画が大好きで毎日色んな作品を見ています。その中で自分が良い!と思った作品を多くの人に見てもらいたいです。そのために、その作品のどこが面白いのか、レビューや考察などの記事を書いています。
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