動物たちが人間のように暮らす擬人化社会を舞台に、食う者と食われる者という本能的な関係性を描いた異色の青春漫画『BEASTARS(ビースターズ)』。
原作は板垣巴留先生による漫画で、週刊少年チャンピオンで連載されていました。
そんな『BEASTARS』は、2019年からアニメ化されて放送・配信されましたが、その評価は人によって大きく分かれています。
とくに「ひどい」「原作と違う」「CGが苦手」という否定的な声もあり、いったい何がそう言わせているのでしょうか?
この記事では、アニメ『BEASTARS』の評価や批判点、どこまでアニメ化されたのか、続編の可能性などを、わかりやすく丁寧に解説していきます。
ビースターズのアニメの評価は?

アニメ『BEASTARS』は賛否両論の作品として知られています。
視聴者によって評価のポイントが大きく異なり、「画期的」「斬新」と賞賛する声がある一方で、「合わない」「違和感がすごい」といった批判も少なくありません。
特にビジュアル面と演出スタイルにおいては、好みが大きく分かれる傾向があります。
原作の持つ繊細で深いテーマを、どう映像作品として再構築するかという点でも賛否があり、視聴者のバックグラウンド(原作既読か未読か)によっても感じ方は異なります。
以下では、特に多かった評価ポイントを3つの視点から紹介します。
評価1:斬新なCG表現と演出に評価の声
まず大きな注目を集めたのが、フル3DCGによる映像表現です。
制作はオレンジ(Studio Orange)というCGアニメ制作に定評のあるスタジオで、これまでのアニメとは一線を画すリアルな質感と滑らかな動きが特徴です。
動物たちの毛並み、筋肉の動き、空気感などを丁寧に表現し、独特の美術世界を生み出しています。
特に、主人公レゴシの内面の葛藤を表す演出や、ハルとの関係における繊細な距離感の表現には、「CGなのに感情が伝わる」「リアリティがある」と好意的な感想が多く寄せられました。
また、演劇部の舞台演出や戦闘シーンなどで見られるカメラワークや照明表現も斬新で、舞台のような奥行きを感じさせる映像に「まるで映画を観ているようだ」という声もありました。
さらには、キャラクターの表情に細やかな変化が付けられており、特にレゴシが葛藤しながらも成長していく姿を、CGだからこそ描けたニュアンスで表現していると評価する意見も見られました。
従来の2Dアニメでは再現しづらかった“重さ”や“静けさ”といった質感が、物語の持つシリアスさにマッチしていたという声も多く見受けられます。
評価2:社会的テーマや心理描写が深い
『BEASTARS』は「食う/食われる」「肉食/草食」という種族の違いをテーマに、人間社会の差別や偏見、暴力性といった問題に切り込んでいます。
アニメでもこのテーマはしっかりと描かれており、特に1期の「食殺事件」とレゴシの葛藤は高い評価を受けました。
食殺事件をめぐる物語は単なる犯人探しにとどまらず、「本能と共存するとはどういうことか?」という倫理的なテーマへと発展し、深い問いかけを視聴者に投げかけます。
また、キャラクター同士の関係性や成長も丁寧に描かれており、レゴシとルイのライバル関係、ハルとの複雑な恋愛模様など、見応えのある心理ドラマが展開されます。
ルイが自らの境遇や過去と向き合いながら、自身の理想と現実の間で揺れ動く姿は、単なる脇役ではなく、もう一人の主人公とも言える存在感を放っており、視聴者に強い印象を残します。
さらに、草食動物であるハルが抱える弱さや強さも、単なるヒロイン像に留まらず、自己決定と主体性を持つキャラクターとして描かれています。
自分が草食動物であるがゆえに他者からどう見られるか、自身がどう振る舞うかという悩みを抱えながらも、自分の意志で選び、行動していく姿は、多くの人に共感や考察の余地を与えました。
このように、BEASTARSのアニメは、ただの学園ドラマや恋愛ものではなく、種族間の壁という設定を通じて、社会の縮図としての群像劇を描いており、深い社会的メッセージと複雑な心理描写が一体となった作品として、評価されています。
評価3:原作再現度が高いシーンも多数
アニメは原作に忠実なシーンも多く、たとえば1期では演劇部での舞台演出、ルイが舞台上で役になりきる場面、レゴシの葛藤をセリフと照明で表現するシーンなど、細かな演出が高く評価されました。
演劇という設定を通じて登場人物の心理を浮き彫りにする構成は、原作そのままの構成力と深さが映像でも活かされており、「演劇シーンの緊張感がすごかった」との声も多く聞かれます。
また、2期ではシシ組との対決がメインの展開となりましたが、原作ファンの間で人気の高いバトルシーンや、レゴシが肉を食べるかどうかの葛藤、ルイと父親の複雑な関係性など、重要な要素がしっかりと描かれています。
中でも、レゴシが肉を拒みながらも強くなることを選び、独自の戦い方を模索していく過程は、原作の“肉食獣としての矜持”というテーマを忠実に映像化した好例です。
さらに、細かなカットやセリフ回しにおいても、原作に忠実な場面が多く、例えばハルのモノローグやルイが葛藤する場面でのカメラアングル、音の使い方など、視覚と聴覚を駆使して再現された点がファンの間で高く評価されています。
原作読者からも「セリフがそのままなのが嬉しい」「あのコマを再現してくれた!」といった感想が多数あり、作品へのリスペクトが感じられる仕上がりでした。
レゴシが精神的に成長していく過程を、映像表現として視覚的に伝える工夫も見られ、たとえば影の使い方や、カメラの寄り方、テンポの緩急などによって、言葉では語られない内面の変化を感じ取れる構成が印象的です。
こうした視覚演出の工夫が、単なる原作の“なぞり”にとどまらず、アニメというメディアならではの魅力として活かされていました。
ビースターズのアニメがひどい理由は?

一方で、「BEASTARSのアニメはひどい」と感じた人がいるのも事実です。
ここでは、その理由を具体的に見ていきましょう。
アニメ全体の構成や演出スタイル、視覚表現といった点で不満の声が上がっている要因を掘り下げて解説していきます。
理由1:CGに違和感を覚える人が多い
もっとも多かった意見が、「CGアニメに慣れていない」「動きがぎこちない」「表情に感情が乗らない」といった3DCGに対する違和感です。
特にアニメを2Dで見慣れている視聴者にとっては、キャラクターが人形のように感じてしまい、物語に入り込めなかったという声もありました。
そもそも2Dアニメーションに慣れている日本人は、3DCGでアニメーションをやること自体に違和感を持っていると思います。
レゴシの微妙な心の動きや、ハルとの複雑な恋愛描写など、繊細な演技が求められる場面では「CGが感情を伝えきれていない」との指摘も少なくありませんでした。
加えて、動作が滑らかでリアルすぎることでかえって違和感を覚えるという視聴者も多く、「アニメの表現としてのCGが生っぽすぎる」「演出のタイミングが独特すぎて感情に入り込めない」といった声も見られました。
また、視線の動きやまばたきといった細かなモーションに関しても、機械的に感じられる場面があり、キャラクターの生き生きとした感情が伝わりにくいと感じた視聴者も多いようです。
2Dアニメでは意図的に強調される「目の演技」や「口の動き」に頼れないため、微妙な心理描写に説得力を持たせるのが難しかったのではないかと考えられています。
これらの要因が重なった結果、視覚的な没入感が損なわれてしまい、「感情移入できなかった」「演技が空回りしているように感じた」という評価につながったのです。
理由2:原作改変による違和感
アニメでは一部エピソードの順番が変更されたり、カットされた描写もありました。
たとえば、ハルの描写が原作よりも控えめになっていたり、彼女の性的な側面や孤独感など、原作で非常に印象的だったキャラクターの深みがアニメでは軽減されており、物語の重層性が薄れてしまったという声もあります。
また、ルイの過去についての掘り下げが浅くなっていたことで、「彼の選択の重さが伝わらない」「なぜあそこまでの行動をとるのか理解しづらい」との不満が出ています。
原作では、彼の複雑な家庭環境や肉食獣との因縁が丁寧に描かれており、読者が彼の葛藤に共感しやすい構成になっていました。
特に2期では、シシ組との因縁やルイが闇社会に身を置く経緯、肉食獣との関係性を通じて変化していく姿など、原作ではじっくり描かれた部分がやや駆け足になっており、深みが薄れたと感じたファンも多かったようです。
レゴシとの再会シーンや、肉体的にも精神的にも大きく変化するルイの成長過程が、アニメでは演出面で淡白だったと指摘されています。
加えて、アニメオリジナルの演出やセリフの変更によって、原作と比較した際にキャラクターの言動に一貫性がなく感じられる部分もあり、「原作の良さが失われている」「改変が蛇足に思える」との批判も見られました。
このように、アニメではテンポや尺の都合から一部の重要な心理描写や背景設定が簡略化されており、原作ファンにとっては“削られてはいけない”と感じる要素がカットされたことが違和感の原因となっています。
理由3:ミステリー要素が中途半端
1期から続いていた「食殺事件」の犯人探しというミステリー要素は、『BEASTARS』の物語において重要な軸の一つでした。
原作では、食殺事件が物語の緊張感を高める装置として巧妙に配置され、犯人が誰なのか、そしてなぜそんな行動に及んだのかが、物語全体を通してじっくりと伏線を張りながら描かれていました。
しかしアニメでは、この展開が2期で比較的あっさりと明かされてしまい、「盛り上がりに欠けた」「意外性がなく淡白だった」という声が多く見られました。
犯人の動機についても、「もっと深掘りしてほしかった」「背景に説得力がない」といった感想が目立ち、サスペンスとしての面白さが十分に発揮されなかったという印象を持たれています。
特に、視聴者が犯人に感情移入できるような演出が少なく、突然明かされて終わってしまったことに対して、「肩透かしだった」「あれだけ引っ張ったのに…」と物足りなさを感じた人も多かったようです。
アニメではテンポ重視で描かれた結果、伏線の回収や犯人の心情描写、事件の真相に至る過程が簡略化され、視聴者が納得感を得るにはやや描写が不足していた印象です。
また、原作ではレゴシ自身が事件を追いながら成長していくプロセスが大きな見どころとなっていましたが、アニメではこの探偵的な側面がやや軽く描かれており、「推理劇としての魅力が感じられなかった」「単なる通過点にされてしまった」という指摘もあります。
このように、ミステリーとしての構成が中途半端になったことで、物語の緊張感が損なわれ、事件解決におけるカタルシスも弱くなってしまったという意見が多数見られました。
理由4:感情の盛り上がりに欠ける演出
キャラクターたちの感情表現に抑揚が少ない、BGMの盛り上がりや演出が淡白、という点も否定的に受け取られた部分です。
とくに、物語のクライマックスにあたるアクションシーンや、キャラクター同士が大きな決断を下す場面において、演出に十分な高揚感がないという声が多く聞かれました。
アクションシーンやクライマックスの対決などでも「静かすぎる」「盛り上がりがない」と感じた視聴者がいたようです。
音楽が場面を盛り上げる役割を果たしていない、演出が淡々としている、演技が淡白に映る――そういった要素が重なり、せっかくの名場面が印象に残らなかったという評価につながっています。
例えば、レゴシとシシ組の戦闘シーンでは、緊迫した場面でありながらカットの切り替えや音の使い方に工夫が足りず、「迫力に欠けた」「手に汗握るというより、流し見してしまった」といった感想も見られました。
また、レゴシとハル、ルイとの感情の交錯といった重要な心理的転換点でも、キャラクターの内面の変化を視聴者に伝える工夫が少なく、「台詞だけで済ませてしまっている」「もっと感情の爆発がほしかった」といった意見が寄せられました。
このように、演出の“静かさ”が悪く出てしまい、ドラマとしての起伏が乏しく感じられたことが、視聴者の没入感を損なう一因となったようです。
ビースターズのアニメはどこまで?続きや3期は?

ここでは、アニメ『BEASTARS』が原作のどこまでを描いていたのか、そして今後の展開や3期=Final Seasonの可能性について、現在わかっている情報を整理して詳しく解説していきます。
原作ファン・アニメ視聴者どちらにとっても、気になる「物語の行方」と「描かれなかった部分」について丁寧にまとめていきましょう。
漫画のどこまでアニメ化?
アニメ『BEASTARS』は、1期が原作の第1巻〜第6巻、2期が第7巻〜第11巻までをアニメ化しています。
全22巻構成の原作に対して、まだ約半分のストーリーしか映像化されていない状態です。
この時点でのストーリーは、レゴシが“食殺事件”の真相を追い詰め、犯人と対峙したあと、社会の中での「肉食獣」としての自分をどう生きていくかという重要な転機を迎えた場面で一度区切られます。
ですが、そこからさらに、レゴシが“肉を食べない肉食獣”として選ぶ人生や、シシ組との再接触、新たな登場キャラであるヤフヤとの出会い、そしてルイとの絆の深化など、見どころ満載のストーリーが残っています。
特に、原作終盤では社会制度そのものへの疑問や、肉食と草食の共存に対する強い問いが投げかけられ、レゴシ自身の精神的成長も描かれています。
アニメではまだそこまで掘り下げられていないため、視聴者からは「もっと先が見たい」「ここからが本番」と期待する声が後を絶ちません。
続きや3期の可能性は?
2023年現在、Netflixにて『BEASTARS Final Season』の制作が正式に発表されており、これは3期に該当するシーズンとなります。
制作はこれまでと同様、3DCGアニメで高い評価を受けてきたスタジオオレンジが引き続き担当。
ファンにとっては安心感のある布陣です。
「Final Season」と銘打たれていることから、物語の完結編として、原作22巻までを一気に描き切る構成になると考えられています。
ここではレゴシとルイの再会や、強敵との最終決戦、草食動物との真の共生を模索する壮大なテーマが展開される予定で、シリーズ最大の盛り上がりを迎えるパートといえるでしょう。
また、ヤフヤやメラニといった新キャラクターの登場によって、物語のスケールは学園の枠を超えて「社会全体」へと広がっていきます。
このように3期では、単なる学園ドラマから脱却し、社会派ドラマとしての側面が一層強く描かれることが予想され、作品の本質にさらに迫る展開が期待されています。
なお、Final Seasonの配信時期や構成話数はまだ明かされていませんが、全11巻分を描くとなると、2クール(全24話前後)程度の構成になる可能性も高いでしょう。
制作には時間がかかると予想されますが、シリーズ完結にふさわしいクオリティを期待する声が高まっています。
今後の正式な続報にも注目が集まっており、『BEASTARS』のアニメシリーズがどのような結末を迎えるのか、引き続き目が離せません。
詳しい情報は公式からチェックしてみてください!
総括:ポイント

『BEASTARS』アニメをめぐる評価や課題をまとめると、以下のようになります。
- 3DCGという表現手法に好みが分かれる。美しいが、慣れないと違和感も
- テーマ性や心理描写は評価される一方で、演出の抑揚やテンポに課題あり
- 原作改変や重要エピソードの省略が一部ファンに不満を残した
- アニメは原作11巻まで。3期=Final Seasonで完結予定
アニメ『BEASTARS』は非常に挑戦的な作品であり、だからこそ賛否が大きく分かれたとも言えます。
CG表現、テーマの重さ、キャラの葛藤──そのすべてがハマれば傑作ですが、そうでなければ「難解」「合わない」という感想につながってしまうのです。
3期=Final Seasonでは、その答えがどのように提示されるのか、今後の展開にも注目したいところです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

アニメ・映画が大好きで毎日色んな作品を見ています。その中で自分が良い!と思った作品を多くの人に見てもらいたいです。そのために、その作品のどこが面白いのか、レビューや考察などの記事を書いています。
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