「え、壁の中に“顔”?」——あの1コマで世界の前提がひっくり返った読者は多いはず。
単行本8巻33話『壁』で、アニが硬質化して外壁をよじ登ろうとした瞬間、剝がれた外殻から無機質な巨人の眼差しがのぞく。
あの異様な静けさは、後に明かされる“壁の正体”と“王家の決断”の核心に直結します。
本稿では、初見の衝撃を丁寧にほどきながら、「壁から顔」の正体と物語的な意味を、読みやすく・最後まで飽きない構成で解説します。
【進撃の巨人】壁から顔の正体と初出シーンを徹底解説
『進撃の巨人』という作品の中でも、読者を最も驚かせたシーンの一つが「壁の中から巨人の顔が現れる」瞬間です。
あの一瞬で、これまで信じていた“人類を守る壁”の意味が根底から覆りました。
ここでは、その初出シーンの流れと、壁に隠された真実を順に解き明かしていきましょう。
第8巻33話『壁』で何が起きたのか
この衝撃のシーンは、単行本第8巻、アニメ第1期の終盤にあたる第33話『壁』で描かれました。
アニ・レオンハートが女型の巨人としてエレン・イェーガーと激しい戦闘を繰り広げ、追い詰められた末に硬質化能力を発動し、壁をよじ登ろうとした場面です。
そのとき、アニの硬質化した身体が壁の外殻を削り取るように破壊。
次の瞬間、壁の内部から巨大な“顔”がのぞきました。
無表情で、目だけがぎょろりと開いたその巨人の姿に、リヴァイたちも息を飲みます。
外の光を浴びることのないはずの壁の中から、まるで「眠る神」のように現れた巨人の顔。
これまで「巨人を防ぐ象徴」だった壁が、実は“巨人そのもの”でできていたという事実が、この瞬間に暗示されたのです。
顔の正体=壁の“支柱”となった超大型巨人群
では、壁の中に潜むこの“顔”の正体は何だったのでしょうか。
それは、145代エルディア王カール・フリッツが築いた「三重の壁」を支える“超大型巨人たち”です。
壁の構造は、巨人の硬質化能力で作られた外殻と、その内側にずらりと並ぶ無数の超大型巨人によって形成されています。
これらの巨人は、人類を守る防壁であると同時に、王の命令ひとつで“地鳴らし”を発動できる抑止力でもありました。
つまり、壁は巨大な兵器であり、世界への警告そのものだったのです。
人々が「守られている」と信じていたその壁は、実際には“眠る巨人たちの背中”に過ぎなかったのです。
145代王カール・フリッツの決断と三重の壁
壁を作ったのは、エルディア王家の第145代当主カール・フリッツです。
彼は、長く続いたエルディア帝国の支配と戦争に疲れ果て、「争いのない平和な世界」を望みました。
その結果、彼は多くの民を連れてパラディ島へと移り住み、三重の壁を築いて外の世界と隔絶したのです。
このとき王は、壁外の世界にこう宣言します。
「もし我々に干渉するなら、壁に潜む幾千万の巨人が地上のすべてを平らにならすだろう」と。
それは虚勢ではなく、実際に“超大型巨人”を壁に組み込み、いつでも地鳴らしを発動できる状態にしていたのです。
平和を守るために、最も恐ろしい武力を眠らせておく——まさに“矛盾した平和”の象徴といえるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
王の名 | 145代エルディア王 カール・フリッツ |
壁の目的 | 民の保護と、外の世界への威嚇 |
構造 | 硬質化した外殻+超大型巨人群 |
名称 | ウォール・マリア/ローゼ/シーナ |
抑止力 | 「干渉すれば地鳴らしを起こす」警告 |
「地上を平らにならす」予告の真意
カール・フリッツの宣言は、決して虚言ではありませんでした。
「地鳴らし」と呼ばれるこの脅威は、実際にパラディ島の壁に埋め込まれた超大型巨人たちを一斉に行進させ、世界を踏み潰すものです。
つまり、“壁の中の巨人”は巨大な核兵器のような抑止力なのです。
王はこの脅威を盾に、外の国々からの干渉を防ぎ、壁内の人々に平穏な生活を与えました。
しかしその代償として、人々は「真実」を知らされることなく、閉ざされた世界で生きることを強いられたのです。
王の平和は、「記憶の改竄」と「恐怖の均衡」によって成り立っていたのです。
硬質化がつくる壁の仕組みと弱点
壁の外殻は、巨人の“硬質化”によって作られています。
この物質は、金属よりも強く、時間が経っても劣化しにくい特徴があります。
人間の技術では到底再現できない構造物で、まさに「巨人の産物」と呼ぶにふさわしいものでした。
しかし、この壁には弱点もありました。
扉や出入口など、人間が作業を行う部分は構造上脆く、巨人に突破される可能性があるのです。
実際、物語冒頭で「超大型巨人」が壁を蹴破る場面も、この“弱点”を突いたものと考えられます。
壁そのものが巨人由来の構造であることは、後に調査兵団によって確認され、ウォール教が守ってきた「神聖な壁」の正体がついに明らかになります。
ウォール教が隠した国家機密
壁の中に巨人がいる——。
この事実を知っていたのが、「ウォール教」と呼ばれる宗教組織でした。
彼らは、壁を“神の造りしもの”として崇め、その内部構造や成り立ちについて外部に漏らすことを固く禁じられていました。
司祭ニックのような高位の聖職者は、「壁の秘密を守るためなら命を捨てる」とまで語っています。
彼らは“神聖な壁”という宗教的価値観を利用し、真実を隠すことで国家の秩序を保っていたのです。
しかし、調査兵団が真実に迫るにつれ、ウォール教は体制維持のための“信仰装置”に過ぎなかったことが浮かび上がります。
つまり、「壁から顔が出た瞬間」は、信仰の崩壊と支配構造のほころびを象徴していたのです。
壁から顔を出したあの巨人は、ただのホラー演出ではありません。
それは、王の罪と人類の欺瞞、そして“平和の代償”を象徴する存在でした。
読者が最初に感じた“ゾッとする恐怖”は、実はこの物語全体の真実を先取りしていたのです。
【進撃の巨人】壁から顔の物語全体での意義と後年の展開を読み解く
「壁から巨人の顔が出る」というショッキングな瞬間は、単なる演出ではありませんでした。
それは、作品全体の謎が一本の線でつながっていく“転換点”でもあります。
この章では、あのシーンが物語の構造の中でどんな意味を持ち、どのように後年の展開へとつながっていくのかを整理していきましょう。
アニの硬質化が“露見”を生んだ理由
アニ・レオンハートが壁に逃げ込み、硬質化して動きを止めたあのシーン。
その硬質化が偶然にも壁の外殻を削り取ったことで、“壁の中に巨人がいる”という驚くべき真実が露見します。
本来、壁の外殻は巨人の硬質化と同質の物質でできており、通常の攻撃ではびくともしません。
しかしアニの硬質化能力は、まさにその素材と“同じ力”を持っていたため、局所的に壁を破損させることができたのです。
戦闘のクライマックスで描かれたこの偶然の露見は、戦いの緊迫感と同時に、世界観そのものを裏返す一撃になりました。
ここで初めて、「人類を守ってきた壁の正体」に疑念が生まれ、後の調査兵団による“壁の秘密”調査が始まるきっかけにもなります。
作者・諫山創がこの展開を「戦闘の最中に世界の構造を暴く」形で描いたのは見事で、アクションと謎解きが一体化した象徴的なシーンと言えるでしょう。
「巨人=人間」仮説との接続点(ラガコ村/地下室)
壁の中の巨人が明らかになったことで、読者の間では「巨人は人工的に作られた存在では?」という仮説が生まれました。
この推測は、後にラガコ村やグリシャ・イェーガーの地下室の真実によって、現実のものとなります。
ラガコ村のシーンでは、調査兵団が壊滅した村の中で、人影ひとつないのに“巨人だけが出現している”という不可解な状況を発見します。
後にそれが、「村人たち自身が巨人化させられていた」という衝撃の事実として判明。
巨人の正体が“人間”であることが、物語の核心に迫る第一歩となりました。
そして、エレンの実家の地下室で発見されたグリシャ・イェーガーの手記。
そこには、壁の外にも人類が生きており、巨人の力を使った“記憶の改竄”と“民族間の戦争”が続いていることが記されていました。
つまり、「壁の中の巨人=人間が作り上げた兵器」であり、
「壁の外の世界=真の敵」だったのです。
壁の顔のシーンは、この大転換に向かう最初の“扉のノック”だったといえるでしょう。
伏線 | 関連する章/話数 | 意味すること |
---|---|---|
壁の中の巨人 | 第8巻33話『壁』 | 壁の構造=巨人群 |
ラガコ村の巨人化 | 第22巻86話前後 | 巨人=人間の証拠 |
地下室の手記 | 第22巻87話『境界線』 | 世界の真実と王家の罪 |
地鳴らしの予告 | 第28巻以降 | 王家の抑止力の実在 |
軍事・政治の視点:なぜ検証できなかった?
壁の中に巨人がいるのなら、なぜ人類は長年その事実を知らなかったのか。
この問いに対する答えは、「宗教」「政治」「軍事」という三つの柱にあります。
まず、「ウォール教」という宗教組織が壁を“神聖視”していたこと。
「壁を傷つけることは神への冒涜」とされ、一般人が壁を調べることすら禁じられていました。
その教義の背後には、政府による“情報統制”がありました。
王政は、壁の中の人々が“平和な世界に生きている”と信じることで体制を維持していたのです。
つまり、壁の構造を調べることは、国の根本を揺るがす“国家反逆”行為だったのです。
調査兵団が真実を追うたびに、憲兵団や王政によって妨害される構図は、その政治構造を如実に示しています。
真実を知る者ほど危険視される社会。
それが“壁の中の人類”という閉ざされた文明の本質だったのです。
ここが鳥肌:無機質な眼が語る終末感(所感)
第33話で描かれた巨人の顔。
無表情で、光を反射する瞳だけが描かれたその“無機質な眼”は、作品の象徴とも言える存在です。
それは怒っているわけでも、眠っているわけでもない。
ただ“そこにある”。
まるで、千年も前から沈黙を守ってきたかのように。
その静けさこそが恐ろしい。
巨人の口が動かないまま、目だけが外界を見つめている描写は、まるで“世界の終わりの証人”のようです。
壁が人類を守るためではなく、むしろ“人類を閉じ込めるため”に存在することを暗示していました。
読者が感じたあの“ゾッ”とする感覚は、単なるホラーではありません。
それは、「世界の真実が近い」という予感の恐怖なのです。
諫山創はこの一枚絵に、物語の結末までの不安と終末観を見事に封じ込めていました。
読み直しガイド:押さえる巻・話と用語
「壁の顔」シーンをより深く理解するには、いくつかの巻を読み返すことをおすすめします。
この章では、特に理解を助けるポイントと用語を整理します。
まずは第8巻33話『壁』。
ここがすべての始まりです。
次に、第22巻から23巻にかけて描かれる「地下室の手記」「グリシャの過去編」。
そして、第28巻以降の「地鳴らし」発動の流れを見ることで、壁の存在がどのように“抑止力”として機能していたかが明確になります。
押さえておくべき主要用語をまとめると以下の通りです。
用語 | 意味 | 関連人物 |
---|---|---|
硬質化 | 巨人の力で体を結晶化させる能力。壁の素材と同質。 | アニ、エレン、ライナーなど |
始祖の巨人 | 王家が継承する巨人。記憶改竄や地鳴らしを操る力を持つ。 | フリッツ王、エレン |
三重の壁 | ウォール・マリア/ローゼ/シーナ。超大型巨人で構成。 | カール・フリッツ王 |
地鳴らし | 壁内の巨人を行進させ、世界を踏み潰す抑止兵器。 | エレン・イェーガー |
王家の記憶改竄 | 王が民の記憶を操作し、壁内の平和を偽装。 | フリーダ、ロッド・レイス |
壁の顔のシーンを読み直すと、これらの伏線が“見えてくる”ようになります。
最初は恐怖でしかなかった顔が、読み進めるうちに「平和の代償」「罪の象徴」「人類の自己防衛の形」として多層的に意味を持ち始めるのです。
壁から顔をのぞかせたあの巨人は、ただの“恐怖の象徴”ではありません。
それは、人類が自ら築いた檻であり、記憶の中の罪でもあります。
『進撃の巨人』という物語は、あの一枚の顔から、すでに“終末”へ向けて歩き出していたのです。

アニメ・映画が大好きで毎日色んな作品を見ています。その中で自分が良い!と思った作品を多くの人に見てもらいたいです。そのために、その作品のどこが面白いのか、レビューや考察などの記事を書いています。
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