『HUNTER×HUNTER(ハンターハンター)』は、冨樫義博先生による人気漫画で、1999年に初めてアニメ化された後、2011年にリメイク版が放送されました。
どちらも同じ原作を元にしているにも関わらず、視聴者からは「新アニメ(2011年版)はひどい」「旧アニメの方が断然いい」といった声が多く上がっています。
この記事では、何度も見直してきた私が、新アニメが「ひどい」と言われる理由を分析しつつ、一方で新アニメだからこそ評価できる点についてもバランスよく解説していきます。
旧アニメと新アニメの違いに悩んでいる方や、どちらから見るべきか迷っている方にも参考になる内容です。
単純に旧アニメと新アニメの比較を知りたいという方は下記の記事をご参照ください。
→ ハンターハンターのアニメの新旧の違いを解説 ←
ハンターハンターの新アニメがひどい理由

まずは、なぜハンターハンターの新アニメ(2011年版)が「ひどい」と言われるのか、具体的な理由を3つの観点からご紹介します。
理由1:子供向けにしすぎた(原作の雰囲気に合ってない)
新アニメは、全体的に明るくカラフルな作風になっており、色合いやキャラデザイン、BGMなどがポップで軽やかな印象を与えます。
これが原作のファンや旧アニメのファンから強烈な拒絶反応をされたのです。
たとえば、ヨークシン編での幻影旅団の登場シーンや、クラピカの復讐心に燃える場面でさえ、視覚的・音響的な演出が明るすぎることで、原作が持つダークな緊迫感が薄れてしまいました。
旧アニメでは、色彩が抑えられ、影のつけ方も重厚だったため、陰鬱な雰囲気や登場人物の内面の闇がより深く表現されていました。
一方、新アニメは少年誌的な「元気いっぱい」な演出が目立ち、特に序盤では「これってギャグアニメ?」と感じてしまうほどのテンポの速さや台詞の軽さが散見されます。
たとえば、冒頭のくじら島の描写にしても、旧アニメでは穏やかでどこか切なさのある静かな雰囲気が漂っていたのに対し、新アニメでは明るい音楽とスピーディーな展開で「冒険活劇」としての面が強調されすぎています。
その結果、ゴンの旅立ちの動機や彼の内面の繊細な葛藤が、視聴者に十分に伝わりにくくなってしまっているのです。
また、キャラクターの表情の演技や演出面でも明るさが際立っており、ヒソカのようなキャラクターの不気味さや緊張感がかなり抑えられています。
本来ならば「何を考えているか分からない不気味さ」が演出の要になるはずのシーンでも、新アニメではテンポやカメラワークが明快すぎてしまい、サスペンスの要素が薄れてしまっています。
特に、幻影旅団の残虐な行動に対しても淡白に描かれている印象があり、原作が持つ倫理的な重さやリアルな恐怖感が伝わりにくくなっている点も否めません。
全体的に、より低年齢層にも分かりやすく届けようという意図が感じられますが、それが逆に原作の持つ深みやダークな魅力を薄めてしまい、長年のファンにとっては物足りなく感じられる仕上がりになってしまったのです。
理由2:音響が悪い
BGMや効果音などの音響に違和感を覚える視聴者も多かったです。
私は正直、新アニメから入った派閥なので、ここはそこまで気になりませんでした。
特に戦闘シーンやシリアスな会話の場面で流れる音楽が、内容にそぐわない軽快なメロディだったり、タイミングがずれていたりすることが指摘されてきました。
また、朝アニメ特有の、BGMの使い回しをしているというところも結構指摘されていました。
緊張感が必要なシーンにもかかわらず、明るく軽快な音楽が流れてしまうことで、物語の深みやキャラクターの感情が伝わりづらくなってしまっています。
旧アニメでは、静けさを活かした緊張感のある間や、重厚なオーケストラ調のBGMがキャラクターの心情や場面の深刻さを強調していました。
BGMが流れない「間」の演出が逆に印象を強めることも多く、音楽が物語の空気を作り出していたと言えるでしょう。
新アニメでは、BGMが常に流れている印象があり、緊張感を演出するための“沈黙の力”が十分に活かされていないという声も多く聞かれました。
また、効果音の使い方についても賛否が分かれています。
たとえば、攻撃を受けたときの「ドンッ」という効果音が軽すぎて迫力を感じにくい、あるいは爆発やオーラの発動シーンでの音の演出が平凡であり、特別感が薄れてしまっているといった指摘もあります。
また、ヨークシン編でのクラピカvsウボォーギンのシーン。
旧作では静かな緊張感が張り詰めた空気を演出していましたが、新アニメではテンポの速いBGMがそれを打ち消し、視聴者の没入感を損ねてしまっています。
さらに、クラピカのセリフ「鎖を持つ理由」のような重たい心理描写の場面であっても、映像に比べて音楽が軽すぎて、感情に訴えかける力がやや弱まってしまっているのです。
総じて、音楽や音の演出が全体的に“無難”で“安全”にまとまってしまっている印象があり、原作が持つ狂気や心理的圧迫感を十分に補強しきれていない点が、新アニメの音響面に対する大きな不満につながっています。
理由3:旧アニメが良すぎた
1999年版のアニメは、原作の不気味さ、重厚さ、キャラの心の葛藤を余すところなく描いていたため、比較されやすいのも当然です。
声優陣の演技も重みがあり、独自のテンポと雰囲気が確立されていました。
そのため、新アニメを見るとどうしても物足りなさを感じてしまうという声が根強いです。
特に、旧アニメは原作に忠実でありながら、独自の解釈や演出によって物語を深く掘り下げることに成功していました。
たとえば、クラピカが復讐を誓う場面では、彼の内面にフォーカスした静かな演出が挿入され、彼の苦しみや孤独を視聴者が自然と共感できる構成になっていました。
また、キメラアント編やGI編がなかったとはいえ、原作にない補完エピソード(レオリオやクラピカの過去話)を丁寧に描いたことで、キャラクターの人間性がより深掘りされていました。
彼らの過去や心の傷を丁寧に追うことで、物語のテーマ性やドラマ性がより高められていたのです。
旧アニメはテンポもゆっくりで、余韻や間を大切にする演出が多かったため、キャラ同士の会話の奥行きや空気感がしっかり伝わってきました。
視聴者に「考える余白」を与えてくれるような構成であったとも言えるでしょう。
結果的に、その空白の中にこそ緊張感や感情の揺れがにじみ出ていたのです。
また、旧アニメの独特な色彩感覚や、間の取り方、静かな緊張感の積み重ねによる演出が新アニメでは省略されたか簡略化された印象が強く、「物足りない」と感じる人が多かったのも事実です。
特に心理戦が中心となるシーンでは、旧アニメの「静かなる張り詰めた空気」が最大限に活かされていたため、比較すると新アニメのスピーディーな進行に違和感を覚える人も少なくありません。
全体として、旧アニメは「空気感を作る力」に優れており、キャラクターの内面世界を映像として描き出す繊細な技術と構成力が、多くの視聴者に深い印象を与えていました。
ハンターハンターの新アニメで良くなった点

では、新アニメにも評価すべき点はあるのでしょうか?
実は、全体を通して観てみると、いくつか旧アニメを超えていると感じる要素もあります。
新アニメには新時代の技術を活かした演出と、テンポの良い展開、より多くのエピソードを網羅する構成など、視聴者にとって新鮮で魅力的なポイントが詰まっていました。
良くなった点1:作画
一目見てわかるのは作画クオリティの高さです。
2011年版では最新のデジタル技術を活かし、キャラクターの動きや背景の描写が格段に向上しています。
作画の安定性も旧作に比べて飛躍的に向上しており、視聴中に「崩れ」を感じる場面がほとんどありません。
たとえば、天空闘技場編でのヒソカとゴンの戦闘シーンでは、躍動感のあるアクションと表情の演出が視覚的にも迫力あるものとなっており、視聴者からも「戦闘シーンが滑らかでリアル」「緊張感が画面越しに伝わってくる」と高評価を得ています。
ヒソカの不気味さやゴンの成長を象徴する場面でも、表情の変化や視線の演出が丁寧に作り込まれており、視覚的な没入感が格段に高まりました。
また、キメラアント編では群衆の描写や王宮内の構造など、背景の緻密さも旧アニメを上回っており、世界観への没入感を高めることに貢献しています。
メルエムが玉座に座る場面や、ナックルたちの移動シーンなどでは、光と影の使い方やカメラの動きによって、登場人物の緊迫した心理がより効果的に伝わってくるように工夫されています。
さらに、細かい描写ではキャラクターの髪のなびき方や、衣装の質感なども丁寧に再現されており、視覚的な情報量が豊富になっています。
動きだけでなく、止め絵の美しさも魅力の一つであり、各話ごとに背景美術や色彩設計に工夫が見られます。
このように、作画の質の向上は新アニメ最大の強みのひとつであり、特に戦闘シーンや感情が高ぶる場面でその真価が発揮されています。
良くなった点2:GI編が最高のアニメ化
グリードアイランド(GI)編に関しては、新アニメでの構成とテンポ感がとても良く、戦闘・修行・友情・成長といった少年漫画の魅力を最大限に引き出していました。
物語のテンポが過不足なく進み、それぞれのキャラクターの成長を丁寧に描写しながら、視聴者に飽きさせない工夫が多く見られます。
とくにゴンとキルアが一緒にゴレイヌやツェズゲラ、ビスケと関わりながら成長していく流れは、新アニメならではの演出が効いており、キャラクター同士の関係性の変化や心の揺れがリアルに伝わってきます。
修行シーンの描写も、旧作では描かれなかった肉体的・精神的な努力や挫折といった要素がしっかりと盛り込まれており、見応えがあります。
また、ゲームとしての“グリードアイランド”の設定も、視覚的・構成的に分かりやすく整理されており、カードの戦略的な使い方や冒険要素がアニメとしてうまく映像化されています。
敵キャラとの駆け引きや協力プレイ、そして危険と隣り合わせのバトルなど、まるで本当にゲームの世界に入ったかのような没入感を味わうことができます。
旧アニメでは映像化されなかった部分も多く、例えば“邪ジャジャン拳”を実践で使いこなしていく過程など、原作ファンが観たかった要素がしっかりとアニメで再現されていたのも高ポイントです。
また、BGMもこの編に関しては緊迫感と爽快感がバランスよく構成されており、「GI編だけは何度でも見返せる」という声も多く見受けられます。
戦闘中の音楽の切り替えや、感動的なシーンでの静かなピアノ旋律など、場面ごとの演出に対して音響がしっかり機能しており、視聴者の感情をより高めてくれます。
総じて、GI編は新アニメの中でも突出して完成度が高く、構成・作画・演出・音響のすべてが高水準でまとまっていたため、シリーズ全体の中でも特に支持されるパートとなっています。
良くなった点3:後半のEDが最高
新アニメの後半、特にキメラアント編以降に使用されたEDテーマ「表裏一体(ゆず)」は、物語の内容と絶妙にマッチしており、視聴者の心を深く打ちました。
この楽曲は、ただ物語の締めくくりに流れるだけでなく、その場面の余韻を優しく包み込むような役割を果たしています。
特に、メルエムとコムギの最期の描写の直後にこのEDが流れたことで、その切なさや希望、そして人間性の深さを改めて噛み締めるような気持ちにさせられたという感想がSNSやレビューサイトでも多数見受けられました。
切なくも力強い歌声と、ED映像の静かで美しい演出が融合し、重たいストーリーの余韻をしっかりと受け止めてくれます。
映像には、本編で描かれた印象的なキャラクターたちの静かなシルエットや、夕暮れを思わせる色彩が使われており、視聴者に強く残る印象を与えています。
さらに、キメラアント編だけではなく、実はハンターハンターという作品全体のテーマを深く表した曲であるともいえます。
一環して、人間にはある一面と全く逆な一面があり、それが表裏一体になっているキャラクターたちに、ゴンやキルアは葛藤します。
そういった物語全体と重なるという意味でも、素晴らしい曲であると思います。
視聴者の感情を整理する役目を担いつつも、作品への愛着をより深めてくれる大切な要素として、新アニメの完成度を一段階引き上げた要因のひとつと言っても過言ではありません。
総括:ポイント

- 新アニメは全体的に明るくテンポが速く、原作のダークさが薄まっていた。
- 音響面では演出の一体感に欠け、感情移入を妨げる場面も。
- 旧アニメの表現が優れていた分、新アニメに物足りなさを感じる人が多かった。
- ただし、新アニメの作画は大幅に進化しており、戦闘シーンの迫力は一級品。
- GI編の構成・演出は非常に高評価で、ファンからも人気が高い。
- 後半のED曲「表裏一体」は、物語と感情を繋ぐ重要な役割を果たした。
結論として、新アニメ『HUNTER×HUNTER』は、確かに旧アニメと比べて賛否が分かれる作品です。
しかし、全体を通して観れば、演出の方向性の違いや技術的進化も含め、十分に楽しめる魅力的なアニメとなっています。
旧アニメ派も、新アニメ派も、それぞれの良さを認めながら観ることで、より深く『HUNTER×HUNTER』の世界に浸ることができるのではないでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

アニメ・映画が大好きで毎日色んな作品を見ています。その中で自分が良い!と思った作品を多くの人に見てもらいたいです。そのために、その作品のどこが面白いのか、レビューや考察などの記事を書いています。
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