みなさんは新海誠と細田守という二人のアニメ映画監督がよく比較されているのをご存知でしょうか?
よくまとめサイトなどでは、このお二人が比較されて、評価を受けたりしています。
今回はなぜ新海誠と細田守が比較されているのか、二人の作品が似てるのかどうか、もしくは、作風にどのような違いあるのかなどを詳しく解説していきたいと思います。
新海誠と細田守がよく比較される理由
早速、新海誠と細田守がよく比較される理由を解説していきます。
二人が比較される理由は、世間的に見ると二人が似ているということが挙げられると思います。
新海誠、細田守に詳しい人からすれば、作風や演出、仕事の仕方などが異なっているように見えますが、世間一般的に見れば、二人はとてもよく似た存在として写るのではないかと考えます。
二人の共通点としては以下のものが考えられます。
- 劇場用の長編オリジナルアニメーションの監督
- 年代が近い
- 知名度が同じくらい
- 作品の公開数・公開スパンが同じくらい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
劇場用の長編オリジナルアニメーションの監督
どちらも劇場用の長編オリジナルアニメーションの監督として有名になったという共通点があります。
新海誠の場合、爆発的に世間に名が知れ渡ったのは、2016年公開の『君の名は。』からでしょう。
『君の名は。』は興行収入が国内だけで250億円を超える超ヒット作となりました。
それまで、割と無名に近かった新海誠の名前が、一気に世間に轟きました。
『君の名は。』が公開されたのは私が小学生の頃で、公開初日に観にいきましたが、席はガラガラだったことを覚えています。
しかし、公開から数日経つと一気に話題となり、異例のロングランとなりました。
懐かしいですね。
一方で細田守の場合は、2006年公開の『時をかける少女』のヒットから世間に名を残しつつあったと思います。
その前にも、劇場版デジモンの短編映画を何本か制作しており、そちらの界隈では話題になっていたと思います。
あと、『時をかける少女』の1つ前には、ワンピースの劇場アニメ『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』を制作しており、賛否両論を巻き起こしました。
そして、『時をかける少女』、『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』とヒット作を連発するようになりました。
ちなみに、『サマーウォーズ』以降の作品に関しては、細田守によるオリジナルのアニメ映画ですが、『時をかける少女』含めてそれより前の作品は、原作ありきで作られている劇場アニメです。
ですので、『時をかける少女』からとても有名になったと思いますが、この作品自体は細田守原作ではないということです。
まあ、細田守アレンジはふんだんに施されているでしょうが。
年代が近い
二人は年代が近いです。
新海誠は1973年生まれの52歳(2025年現在)です。
細田守は1967年生まれの57歳(2025年現在)です。
どちらも50代で世代が近いという共通点が挙げられます。
また、見た目の印象も似ている気がします。
どちらも年齢よりも若く見えると思います。
知名度が同じくらい
これは厳密な根拠がある話ではないのですが、私の肌感として、二人は知名度が同じくらいだと思います。
私はあまりテレビを見ないのでアレですが、私がテレビを見ていた2011年〜2021年くらいまでのスパンで、二人ともの作品が同じくらいのボリュームでCMが打たれていたと思います。(新海誠の場合は2016年からですが)
それで2025年現在、おそらく、普通に年に10回くらい映画館に行くという人は全員新海誠と細田守の名前を聞いたことがあるレベルでは知れ渡っていると思います。
ただ、どっちがどっちだっけとなる人はたくさんいる見たいですけどね。
例えばうちの親に聞くと、「細田守?君の名はの人?」のような答えが返ってきます。
ライト層からしたら監督というのはそれくらいの認識なのでしょう。
作品の公開数・公開スパンが同じくらい
二人の作品の公開数・公開スパンが大雑把にいうと似通ってます。
というか、オリジナル劇場アニメを数年に一回出しているアニメーション監督はあまりいません。
新海誠 | 細田守 | |
---|---|---|
公開数 | 8作品 | 5作品(11作品) |
公開スパン | 2〜4年 | 3年 |
新海誠に関しては、公開スパンに波がありました。
これは、初期の作品の上映時間に波があるからだと思われます。
作品の上映時間、つまり尺が長ければ長いほど制作には時間がかかりますので、このように波があるのでしょう。
細田守に関して、「5作品(11作品)」と表しているのは、細田守オリジナルで制作された作品は5作品で、それを含めてこれまでの監督作品の合計は11作品なので、このような表し方になっています。
表にまとめるとそこまで似ているとは思いませんが、世間一般からすれば、同じような間隔で新作が発表されているという感覚になるのでしょうな。
新海誠と細田守は似てるのか
先ほどまでは、割と抽象的に見て、新海誠と細田守が似てるのかについて述べてきましたが、ここからは実質的にこの二人が似ているのかについて話していきたいと思います。
アニメーション監督として重要になってくるのは、作風だと思いますが、二人の作風は全く異なっています。
それは作品を見れば一目瞭然でしょうが、具体的にどのような違いがあるのかについて、次の項目で話していきたいと思います。
新海誠と細田守の作風の違い
新海誠と細田守の作風の違いを、「物語の内容」と「作画・アニメーション」の大きく二つに分けて解説していきたいと思います。
物語の内容
映画のヒットに大きく関わる要素である「物語(ストーリー)」ですが、二人ともかなり違った内容で展開されます。
新海誠の場合
新海誠の特徴を下記にまとめました。
- 個人の内面にフォーカス
- 恋愛要素強め
- 作家性が強い(特に『君の名は。』以前)
- 個人の問題が世界の問題につながる(いわゆるセカイ系)
- 神秘的・宇宙的要素と絡めがち
個人の内面にフォーカス
個人の内面にフォーカスするというのは、基本的にはどの作品もそうなのでしょうが、新海誠は、個人の内面を特に上手く描くことができていると思います。
なんというか他の監督に比べて、情景・セリフ・動作含めて、主人公やヒロインが内面を曝け出すというシーンが多いと思います。
これは新海誠が文学部出身で小説もかけるというところも関係しているとはおもいます。
もちろん展開の面白さはあるのですが、それ以上にキャラクターの内心をずっしりと視聴者に伝えることによって魅せている監督だなと思います。
恋愛要素強め
恋愛要素が強いということに関しては、新海誠監督の永遠のテーマなのではないでしょうか。
だって、ほぼ全部の映画、プロットの主軸に置かれているのが、男女の恋愛関係です。
『星を追う子ども』だけ少し恋愛要素弱めですが。
作家性が強い(特に『君の名は。』以前)
作家性というのは、その人独自の作風がどれだけ強いかということだと思います。
正直言って新海誠の作家性が強い作品(『言の葉の庭』以前の作品)は、大衆に受け入れられるものではないと、多くの人が評論などでおっしゃっています。
私は新海誠の作家性の強い作品はだーーーーーーーーーーい好きですけどね。
それで、『君の名は。』からは新海誠は作家性を少し抑えて、大衆が受け入れられるような作品を作ったことによって、大ヒットを記録したとの評論がたくさんあります。
これは私もその通りだと思います。
一度跳ねてしまえば、ある程度作家性が高い作品を作っても、興行収入は監督の名前だけで見込めるようになるので『君の名は。』本当に大成功だったと思います。
『天気の子』『すずめの戸締り』からは新海誠の作家性が復活しつつあるとは思いますが、やはり、『言の葉の庭』以前に比べるとまだまだです。
個人の問題が世界の問題につながる(いわゆるセカイ系)
これは特に最近の作品で顕著なのですが、セカイ系作品が増えたと思います。
というか、劇場アニメともなってくれば、セカイ系くらいのスケールがないと盛り上がりにかけるとも思いますけどね。
クレしん映画だって、ドラえもん映画だって言ってしまえばセカイ系ですもんね。
神秘的・宇宙的要素と絡めがち
これはおそらく、新海さんの作品制作のインスピレーションが神秘的なもの、宇宙的なものにあるためだと考えます。
これはいくつかのインタンビューなどで明らかになっていることですが、新海誠は個人個人の関係を、宇宙のようなスケールの大きな次元と絡めて描くことで、物語が生きるということをおっしゃています。
また、『君の名は。』や『すずめの戸締り』の設定の作り込みからすると、日本の神話や神社にも相当お詳しいのかなと思います。
細田守の場合
細田守の特徴を下記にまとめました。
- 家族の絆を描く
- 男女の恋愛よりも家族愛
- 全年代対象のわかりやすいストーリー
- ファンタジー要素は少なめ(作品による)
- 社会と絡める
家族の絆を描く
これは細田守のオリジナル作品には特に共通して言えることであります。
最初の劇場用オリジナル映画『サマーウォーズ』では、主人公ケンジと大家族”陣内家”との一夏の世界規模の戦いを描きます。
それからの作品でも、親子関係や兄弟関係、血のつながりはないが親子のような関係など、さまざまな形の”家族”についての作品が見られます。
男女の恋愛よりも家族愛
新海誠との大きな違いは、男女の恋愛要素はとても少ないということです。
全くないということではありませんが、話の本筋で使われているものは少ないと思います。
最近だと、『竜とそばかすの姫』が、ディズニー映画『美女と野獣』のオマージュであることから、恋愛が入っているのではないかと思われがちですが、『竜とそばかすの姫』でも登場したのは、恋愛とは違う愛情のように私は感じました。
恋愛要素としては、『サマーウォーズ』でのケンジとナツキの関係や『バケモノの子』での九太と楓の関係などですね。
いずれも、恋愛要素としては薄いものですので、もしかしたら細田監督は恋愛にあまり興味がないのかもしれません。
全年代対象のわかりやすいストーリー
細田守の作品はストーリーが明快です。
これは”家族”をテーマにした作品であることが関係していると思います。
私たちが作品のストーリーを理解するということは、登場人物がどのような思いでその行動をしたかがわかるという必要があると思います。
家族がテーマだと、〇〇のために行動する、ということがわかりやすいですし共感できます。
例えば、新海誠の『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』で描かれていることは、子どもたちには理解し難いものがあると思います。
ですので、全年代が割と頭を使うことなく楽しめるのは細田守でしょう。
ファンタジー要素は少なめ(作品による)
細田守は新海誠に比べるとファンタジー要素が少なめなように感じます。
『バケモノの子』は例外として、その他の作品は現代をモチーフにしつつ、近未来のサイバー空間での出来事や、普通の田舎での出来事など、現実であり得る設定で少しだけファンタジー要素を入れて作品に味付けしているというような感じです。
社会と絡める
新海誠作品は個人の内面が世界の大きな問題と繋がっているというセカイ系の設定が多かったのに対して、細田守作品は逆に社会(世界)に主人公たちが翻弄されていくという話が多い気がします。
『竜とそばかすの姫』では、SNSの世界で”歌”という個性で魅了して社会に立ち向かう主人公。
『おおかみこどもの雨と雪』では、狼男と人間とのハーフである異形の子供たちが人間社会に適用しようと葛藤する姿を描きます。
このように、大災害防ぐぜ、とか、世界よりヒロインだぜ、とかみたいな感じではなく、社会の一部として、社会とどう向き合っていくか考えていくお話しが多いです。
作画・アニメーション
作画・アニメーションも、映画の評価を大きく左右する事柄の一つとなってきますが、二人とも独特な特徴を持っていると思います。
新海誠の場合
新海誠の特徴を下記にまとめました。
- 色彩豊か
- 風景美
- リアル
- 情景でキャラクターの心情を表現
色彩豊か・風景美・リアル
新海誠のアニメーション、特に背景美術では、豊かな色彩を使って表現されています。
豊かな色彩で、かつ背景で描かれている現実世界があまりにもリアルなので、私たちはついリアルに作り手が描いているんだなと思ってしまいます。
しかし、リアルなのは、ディテールであって色彩はリアルではないと思います。
なぜなら私たちの生きている現実の風景はあそこまで美しくありませんから。
ディテールは細く描きつつ、できる限り現実を美しく描いているのが新海誠のアニメーションの特徴であると思います。
情景でキャラクターの心情を表現
新海誠は情景によってキャラクターの心情を表現することが多くあると思います。
情景というのは、風景や雰囲気などを伝える描写のことです。
情景でキャラクターの心情を伝えるというのは、キャラクターの心情が反映された風景や雰囲気のことです。
一番わかりやすい例えは、キャラクターが悲しくなると、雨が降る、みたいなものです。
こんなにわかりやすいものではありませんが、新海誠はこのような情景描写をたくさん使っていると思います。
特に『君の名は。』より前の作品で多く見られる表現技法だと思います。
細田守の場合
細田守の特徴を下記にまとめました。
- キャラクターの動きが派手
- キャラクターの表情が豊か
- 3Dをうまいこと組み込んでいる
- 影の付け方が独特
キャラクターの動きが派手・キャラクターの表情が豊か
細田守は、躍動感のあるアニメーションを多用します。
特に『サマーウォーズ』などは肉弾戦があるOZ空間でのバトルはもちろん、現実世界の描写でもキャラクターの動きが派手で、表情なども豊かに表現されています。
これによって、観客は映像に飽きることなく物語に集中することができると思います。
実際に何気ないシーンでも、躍動感あるように見せるのが上手な監督だと思います。
3Dをうまいこと組み込んでいる
細田守作品では、3D CGを使ってキャラクターを動かすシーンが結構出てきます。
これは異形のキャラクターやバーチャルのキャラクターを動かしているというものがほとんどで、うまく組み込まれていると思います。
『サマーウォーズ』のOZ内のキャラクター、『バケモノの子』の化け物たち(全てではない)、『ミライの未来』の異形のキャラクター、『竜とそばかすの姫』のUのキャラクターなど、世界観が分かれている場面でうまいこと使われているようです。
影の付け方が独特
これは細田守特有の表現だと思うのですが、キャラクターの影をつける時に、普通はつけるべきところにあえてつけていないのです。
キャラクターの顔や首元、手足などに影をつけるべきですが、つけていないため、独特の表現になっています。
この理由などは、細田守のテレビの特集でまとめられていた記憶があるのですが、詳しく覚えていないので、また別の記事で調査してまとめたいと思います。
新海誠・細田守、もう1人あげるとすれば?
新海誠と細田守と同世代のアニメ監督で何年かに1回オリジナルアニメーション映画を制作しているような監督をもう1人あげるとすれば、湯浅政明か、亡くなっていますが、今敏でしょう。
湯浅監督はテレビアニメシリーズも有名で面白い作品をたくさん作られていますが、劇場アニメも独自の世界観を生かして、作られています。
が、なぜか知名度が高くないですね。(ライト層に)
これは、湯浅監督が大衆向けの作品を作っていないことにあると思うので、新海誠・細田守のように大衆向けを大きく当てて、それから作家性の強い作品を作る、ということをしてもいいかもしれませんね。
今敏監督に関しても、素晴らしい映画をたくさん世に出していますので、今後まとめ記事を作成したいと思います。
まとめ
今日は、新海誠と細田守、二人のよく比較されがちな監督について、共通点と逆に違いを解説してきました。
同世代であることや同じくらいの知名度であることなどから、よく比較される二人ですが、お二人とも独自の良さを持っていらっしゃいます。
ですので、比較して自分の好みの方の映画を見ればいいと思います。
二人の映画を全く見たことがないという方は、是非さまざまな媒体で見ることができますので、見て見てください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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