「この曲、なんのアニメの主題歌だったっけ?」
AliAの『かくれんぼ』を初めて聴いた人の多くが、そう感じるのではないでしょうか。
切なさと疾走感を兼ね備えたメロディ、透明感のあるボーカル、そしてどこか物語性を感じさせる歌詞。
まるで青春アニメのエンディングのような雰囲気があります。
しかし、結論から言うと『かくれんぼ』はアニメ作品の主題歌ではありません。ドラマや映画、CMなどのタイアップもついておらず、YouTubeやSNSから自然発生的に人気が広がった楽曲です。それでもアニメ曲と勘違いされる理由には、しっかりとした背景があります。
本記事では、その理由や曲の魅力、歌詞の意味、ファンの反応などを深掘りしてお伝えします。
AliA『かくれんぼ』はなんのアニメ主題歌?
AliAの代表曲『かくれんぼ』を聴くと、多くの人が「これってアニメの曲だった?」と考えます。切ないメロディや物語のような歌詞、感情のこもった歌声は、まるで青春アニメのワンシーンのように心に刺さります。実際にSNSやYouTubeのコメント欄でも「アニメのエンディングかと思った」「どのアニメで流れてたっけ?」という声をよく見かけます。
しかし、ここから詳しく見ていくと、意外な事実が見えてきます。
まずは結論から説明していきます。
結論:アニメの主題歌ではない
『かくれんぼ』は、どのアニメ作品の主題歌にも使用されていません。公式の情報や音楽配信サイト、レコード会社の発表を確認しても、アニメとのタイアップ実績は存在しません。
人気が出たきっかけも、テレビやアニメではなく、YouTubeで公開されたミュージックビデオでした。後にTikTokなどのショート動画でも使われるようになり、自然と多くの人の耳に届いていきました。
では、本当にどのメディアにも使われていないのでしょうか?次の見出しで詳しく確かめてみましょう。
タイアップ実績もなし(ドラマ・映画・CMも非該当)
『かくれんぼ』は、アニメだけではなく、ドラマ、映画、CMなどのタイアップにも使用されていません。多くのアーティストは知名度を上げるためにタイアップをきっかけに人気が広がることがありますが、AliAの場合、『かくれんぼ』は真逆です。タイアップなしで、純粋な楽曲の力とファンの拡散によって知られるようになりました。
実際に、同じAliAの他の楽曲にはタイアップの例があります。たとえば『limit』はYouTubeアニメ『異能のアイシス』のオープニング曲に、『realize』は日本テレビドラマ『火村英生の推理2019』の主題歌に使われています。それに対して『かくれんぼ』は完全に“フリー”な状態でリリースされました。
以下のように整理すると、違いが分かりやすくなります。
楽曲名 | タイアップ | 使用作品 |
---|---|---|
かくれんぼ | なし | なし |
limit | あり | YouTubeアニメ『異能のアイシス』OP |
realize | あり | ドラマ『火村英生の推理2019』主題歌 |
このように、公式に発表されている情報から見ても『かくれんぼ』は完全に独立した楽曲であることが分かります。
なぜアニメ曲と勘違いされるのか
では、どうして多くの人が『かくれんぼ』をアニメの曲だと思うのでしょうか。そこにはいくつか理由があります。
まずひとつめは、「楽曲の雰囲気」です。静かなピアノから始まり、徐々に盛り上がっていく曲調。まるでアニメのエンディングのような展開を感じさせます。歌詞も、誰かを探しているような切ない気持ちや、届かない想いを描いており、アニメのストーリーと重ねてしまう人が多いのです。
さらに、ボーカルAYAMEの声もアニソンに近い印象を与えます。澄んだ高音、感情の強弱がはっきりしていて、キャラクターの心情を歌っているように感じられるのも理由の一つです。
もうひとつの理由は、ファンが作った「MAD動画」や「アニメ編集動画」の存在です。好きなアニメのシーンと『かくれんぼ』を合わせたファン動画がYouTubeやTikTokに投稿され、それを見た人が「このアニメの主題歌かな?」と錯覚してしまったケースもあります。
YouTubeから火が付いた楽曲という背景
『かくれんぼ』が広く知られるようになったきっかけは、アニメでもテレビでもなく、YouTubeでした。2019年に公開されたミュージックビデオは、白い世界を背景に歌い上げるAYAMEの姿と、切ないメロディが印象的で、公開直後からじわじわと再生回数を伸ばしていきました。
その後、YouTubeのおすすめ欄や口コミで広がり、さらにTikTokでのカバー動画やアレンジ演奏動画が増えていきます。特に2021年頃から急激に注目され、2024年時点ではMVの再生回数が6,000万回を超えるほどの人気曲になりました。
テレビに映らなくても、SNSと音楽が出会えばここまで広がることができる。まさに、現代の音楽シーンらしい成功の形と言えるでしょう。
TikTok・ショート動画での広がりと再評価
『かくれんぼ』が多くの人に知られるようになった大きなきっかけが、TikTokやYouTubeショートといった短尺動画の拡散です。特に2021年頃から、曲のサビ部分「もういいかい、まだだよ」というフレーズを使った動画が急増しました。恋人とのすれ違いや、誰かを追いかけるような映像、アニメの切ないシーンを編集してこの楽曲を重ねる人が多くいました。
数秒の動画であっても、『かくれんぼ』の持つ切なさや壮大な雰囲気は強く印象に残ります。特に、映像と音楽がぴったり重なった瞬間、「この曲なんて名前?」というコメントが一気に増え、さらに曲は広がっていきました。
また、歌ってみた動画やピアノ・ギターのアレンジ演奏も多く投稿され、そのたびに再評価されていきます。プロではない一般の人たちが、自分なりにこの曲を表現し、それをSNSで発信することができる時代。そこで『かくれんぼ』は“アニメの曲みたいなバンド音楽”として自然に広まりました。
歌詞や世界観がアニソンらしい理由
『かくれんぼ』の歌詞は、ただ恋愛を描くのではなく、「誰かを探しても届かない」「隠れてしまった気持ちに気づいてほしい」というような、物語性を強く感じさせる内容です。この抽象的な言葉と具体的な情景描写のバランスが、アニメのストーリーと重ねやすく、多くの人が“アニソンっぽい”と感じる理由になっています。
例えば、歌詞の中には「光のない部屋で名前を呼ぶ」「声にならない涙を隠す」というような表現があり、まるでアニメのキャラクターが抱える秘密や葛藤を描いているように感じられます。物語の主人公が誰かを想いながらも、自分の気持ちを伝えられない——そんなシーンが自然と頭に浮かぶのです。
また、曲全体の構成もアニメのエンディング曲のように作られています。静かに始まり、サビで一気に感情が爆発する。最後には余韻を残して終わる。この流れが、視聴者の心に物語の続きを想像させます。
ボーカルAYAMEの透明感ある声質
『かくれんぼ』を語るうえで欠かせないのが、ボーカルAYAMEの声です。彼女の歌声は透き通っていながらも温かさがあり、特に高音になると涙がこぼれそうな儚さを感じさせます。
AYAMEは子どもの頃から歌うことが好きで、家族とよくカラオケに行っていたと語っています。中学の合唱コンクールでは、先生に「あなたが一人で歌いなさい」と任され、全校生徒の前で歌って賞を獲得した経験もあります。そうした場数や、歌を通して誰かの気持ちに寄り添おうとする姿勢が、今の歌声にも生きています。
特にサビの「見つけてほしいのに隠れてしまうんだ」という部分では、感情の揺れが声に出ていて、聴く人の胸を強く締めつけます。この声があるからこそ、『かくれんぼ』はただのバンド曲ではなく“物語として聴ける曲”になっているのです。
バンドサウンドとクラシック要素の融合がアニメ的
AliAというバンドは、ロックやクラシックなど、異なるジャンルの音楽を組み合わせた「ハイブリッドロックバンド」として活動しています。その個性が『かくれんぼ』にも表れています。
特徴的なのは、キーボードやヴァイオリンの音色がバンドサウンドに深みを与えている点です。バンドのメンバーRINAは幼い頃からクラシック音楽に触れてきたヴァイオリニストで、曲の中で奏でられるヴァイオリンは、まるでアニメ映画の劇伴のような切なさと透明感を作り出します。
一方で、ギターのERENはロックを軸にしながら、曲全体の構成や感情の流れを意識して作曲しています。この「クラシック的な旋律」と「ロック的な勢い」の融合が、アニメ音楽に近い壮大さを生み出しているのです。
実際、アニメの主題歌にはバンドサウンド+ストリングスという組み合わせが多く使われます。たとえば『進撃の巨人』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』なども、感情と楽器の重なりで印象を残す音楽が特徴です。『かくれんぼ』も同じように、音の重なりで感情を描くタイプの曲だからこそ、アニメと結び付けられやすいのです。
AliA『かくれんぼ』はなんのアニメ主題歌?:曲の魅力
『かくれんぼ』はアニメの主題歌ではありませんが、アニソンのように多くの人の心に残る不思議な魅力を持っています。耳を澄ませると、物語のような歌詞、感情の波を描くようなメロディ、切なさと力強さを行き来するサウンドが重なり合い、一曲まるごとひとつのアニメのように感じられます。この楽曲の魅力をより深く理解するために、歌詞、メロディ、そしてリリース背景の3つの視点から掘り下げていきます。
歌詞の意味と隠されたメッセージ
『かくれんぼ』の歌詞には、単なる「かくれんぼ」を超えた意味が込められています。誰かに見つけてほしいのに、自分から隠れてしまう。心をさらけ出したいのに、傷つくのが怖くて一歩踏み出せない。そうした複雑な気持ちが静かに、でも強く描かれています。
たとえば「もういいかい」「まだだよ」というフレーズは、子どもの遊びを思わせる言葉ですが、大人になってから聴くとまるで心の叫びのように響きます。好きな人に気づいてもらえない、仲直りしたいけど素直になれない、そうした“見つけてほしいのに見つけられたくない”葛藤を象徴しているのです。
歌詞の中には、「届かない声」「光の届かない場所」「言えないまま飲み込んだ言葉」など、感情を抱え込んだまま立ち止まっている人の姿が描かれています。それでも楽曲の最後に向かって感情が徐々に溢れ出すように歌われていくため、聴き手はまるで主人公の心の中を旅しているような感覚になります。
切なさと疾走感が同居するメロディ構成
『かくれんぼ』のメロディは、静けさと爆発、儚さと力強さが混ざり合った構成になっています。曲の冒頭はピアノと薄いストリングスだけで始まり、まるで雨上がりの街のような静かな空気を感じさせます。しかしサビに入ると、ギターとドラムが一気に駆け出し、心の奥にしまっていた感情が溢れ出すように響きます。
特に印象的なのは、サビ直前に一度音が少なくなり、息を止めるような「間」が作られていることです。その直後に広がる伸びやかなメロディが、まるでアニメのクライマックスシーンのように胸を打ちます。
切なさと疾走感のバランスが絶妙で、涙が出そうなくらい切ないのに、どこか希望を感じさせる。この二面性こそが『かくれんぼ』の魅力です。
初収録アルバムやリリース情報
『かくれんぼ』は、2019年2月にリリースされたミニアルバム『AliVe』に初めて収録されました。このアルバムはバンドの名を広く知らしめた作品であり、『かくれんぼ』はその中でも特に人気の高い楽曲として注目されました。
その後、ミュージックビデオがYouTubeで公開され、口コミやSNSで話題になりました。タイアップもテレビでの露出もない状態で、6,000万回以上の再生数を獲得しているのは異例と言えます。音楽の力だけでここまで多くの人の心を動かしたことが、この曲の価値を物語っています。
曲の基本情報を以下の表にまとめます。
項目 | 内容 |
---|---|
楽曲名 | かくれんぼ |
アーティスト | AliA |
リリース | 2019年2月(ミニアルバム『AliVe』) |
作詞 | AYAME・TKT |
作曲 | EREN |
タイアップ | なし |
MV公開 | YouTubeにて公開、再生回数6,000万回以上 |
このように、『かくれんぼ』はアニメやドラマの力を借りることなく、自力でここまで愛されてきた楽曲です。だからこそ、多くの人が“この曲には物語がある”と感じ、アニメの主題歌だと錯覚してしまうのかもしれません。
ライブでの人気度とファンの反応
『かくれんぼ』は、ライブでも欠かせない人気曲のひとつです。イントロのピアノが鳴り始めると、会場の空気が一気に静まり返ります。観客はペンライトやスマホのライトをそっと掲げ、息を飲むように耳を傾けます。そしてサビに入る瞬間、感情が一気に解き放たれ、涙ぐむファンも少なくありません。
SNSでは「生で聴いたら鳥肌が止まらなかった」「サビで自然と涙が出た」「声がCDよりもリアルで、心に刺さった」といった感想が多く見られます。激しいロックナンバーの後に『かくれんぼ』が演奏されることもあり、その静かな始まりがより印象的に感じられるのです。
特に印象的なのは、歌詞の「もういいかい?」の部分でファンが息を合わせて深く入り込む空気です。声を出して歌うのではなく、全員が心の中で歌っている。そんな一体感が生まれます。
他のタイアップ楽曲との比較(『limit』『realize』など)
AliAには、実際にタイアップされた曲も存在します。代表的なものに『limit』と『realize』があります。この2曲と『かくれんぼ』を比較すると、曲の使われ方や魅力の伝わり方の違いが見えてきます。
楽曲名 | タイアップ | 特徴 |
---|---|---|
かくれんぼ | なし | YouTubeから自然に広がったバイラルヒット |
limit | YouTubeアニメ『異能のアイシス』OP | 疾走感と儚さを併せ持った王道アニソン構成 |
realize | ドラマ『火村英生の推理2019』主題歌 | ミステリアスかつ壮大、ドラマの世界観と調和 |
『limit』はアニメの世界観に合わせた力強い構成で、イントロからサビまで一貫して勢いがあります。一方、『realize』はドラマチックで少し大人びた雰囲気を持っており、サスペンスドラマと相性の良いサウンドです。
それに対して『かくれんぼ』は、特定の作品に寄り添うのではなく、誰の心にも寄り添う“自由な曲”です。だからこそ、どのアニメにも当てはめられそうだと感じる人が多いのです。
今後アニメ主題歌に起用される可能性は?
『かくれんぼ』そのものがアニメに採用される可能性は低いかもしれませんが、AliAの楽曲が今後アニメ主題歌になる可能性は高いと言えます。実際、アニメ業界ではバンドとストリングスを組み合わせた楽曲が求められることが多く、AliAの音楽性と非常に近い傾向があります。
さらに、すでに『limit』『NewGame』『ココロノナカ』などでアニメとのタイアップ実績があるため、音楽制作側から信頼されていることも分かります。特に『NewGame』は2024年放送のアニメ『神は遊戯に飢えている。』のオープニングとして起用され、AliAの知名度はさらに広がりました。
もし『かくれんぼ』のような切ないバラードがアニメに起用されるとしたら、恋愛アニメや青春ドラマ、または「失った何かを取り戻していく物語」などがぴったりでしょう。
個人的な感想:アニメになっても違和感ない完成度
『かくれんぼ』は、アニメの主題歌ではないのに、まるでアニメの世界から生まれたような完成度があります。静かな夜の校舎、雨の降る窓辺、夕暮れの帰り道。そんな情景が自然と浮かんでくる曲です。
音だけで物語を感じさせる力があり、聴く人それぞれの記憶や感情を呼び起こします。これは、音楽にストーリー性が備わっていなければできないことです。アニメが映像で語るなら、『かくれんぼ』は音で語る物語だと感じます。
もし本当にアニメのエンディングとして流れたら、キャラクターたちが静かに目を閉じ、夕日の中で立ち止まるシーンが思い浮かびます。そして次の回の始まりを、また見たくなる。そんな余韻を残してくれる曲です。

アニメ・映画が大好きで毎日色んな作品を見ています。その中で自分が良い!と思った作品を多くの人に見てもらいたいです。そのために、その作品のどこが面白いのか、レビューや考察などの記事を書いています。
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